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不思議なドル安とビットコイン急落。安倍首相は「伝家の宝刀」を抜くか=江守哲

米長期金利が上昇しているにもかかわらず、なぜいまになってドル安になるのでしょうか。仮想通貨や各主要通貨の値動き、想定レンジとともに解説します。(江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて

本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2018年1月22日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

2018年全体と1月の想定レンジは? 各主要通貨と仮想通貨を分析

「不思議」なドル安

ドル円は下落しました。110円割れ目前まで下げるとは、なかなかのドル安です(編注:原稿執筆時点2018年1月22日)。しかし、いまになってなぜドル安になるのでしょうか。それも、米長期金利が上昇しているにもかかわらず、です。

今週の注目ポイントは、アップルの発表でした。アップルが17日に、海外で保有しているキャッシュを還流させ、約380億ドルの税金を支払うと表明しました。

私の知り合いの為替トレーダーの方によると、米国企業が持つ膨大な海外利益は3兆ドルに達しており、その7割はアップル、マイクロソフト、グーグル、アマゾンの4社で占められているそうです。

そして、その7割が欧州にあるそうです。さらに言えば、これらはすでにドルになっているので、レパトリエーションの為替市場への影響はないとみられてきました。また報道では、マイクロソフトは92%がすでにドルに転換しているようです。こうなってしまうと、トランプ政権の本国投資法の為替相場への影響はあまりないとの話になりそうです。

一方で、報道では、彼らのポジションは米国債になっているとの指摘もあります。為替としてはすでにドル建てですが、問題は債券を現金にする際の動きです。

米国債で保有しているとすれば、彼らは米国債を売って現金にします。債券売りは利回りの上昇につながる可能性があります。しかし、それでもドルが買われていません。不思議な光景ともいえます。

何か理由を探せば出てくるのでしょうが、上述のように、現象面を見るしかありません。

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

もっとも、米国債になっているということは、すでにドルになっているので、そのことだけをとらえれば、やはりドル高要因ではないといえます。

繰り返しになりますが、金利市場筋によると、米国企業が海外に保有する利益は3兆ドルに上るといいます。その7割がアップル、マイクロソフト、グーグル、アマゾンで占められているとの指摘があります。

本当でしょうか? そうだとすれば、いかにこれらの企業が世界を席巻しているかがわかりますね。さらに、その資金の7割が欧州にあり、やはりその大半がドルになっているようです。そうであれば、やはりドル高にはなりませんね。

2005年の本国投資法の焼き直しで、今回もドル高・円安になるとの期待がありましたが、今回は期待外れに終わりそうです。

勢いよく進む「ユーロ高」

一方でユーロ高が進んでいます。

ECBの金融政策が想定よりも早く正常化に向かうとの思惑や、ドイツの連立協議進展への期待が広がったことで、ユーロ買い・ドル売りが進行しています。

このユーロ高は円高を誘っており、これがドル円の下落につながっているようです。ユーロドルは一時1.23ドルに乗せ、ポンドドルも1.38ドル台にまで上昇する場面がありました。これも、ものすごい上昇圧力といえます。

11月のユーロ圏貿易収支が263億ユーロの黒字となり、3月の287億ユーロの黒字以来、8カ月ぶりの高水準となったことも、ユーロ買いにつながっているといえそうです。

とにかく、ユーロ域内経済見通しが上向くにつれて、市場ではユーロ圏の資産をポートフォリオの中で増やす動きが広がっています。

一部には、今年のユーロ域内経済の成長率が米国経済を上回るとの見方を示す向きもあります。昨年来のユーロ高は好調な経済を背景にしており、きわめて健全な上昇といえます。

経済指標が好調であり続ける限り、資産買い入れのテーパリング(段階的縮小)が進むことになり、ユーロドルは上昇基調を続けるでしょう。

Next: 上昇基調を続けるユーロドル。ただしECB当局者はユーロ高に懸念を表明

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