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日本が知るべき「新型コロナの恩恵」いま本当に必要な経済対策とは何か=矢口新

コロナにも被害と恩恵がある。2020年の国内死者数は11年ぶりに前年を下回る見込みだ。被害にばかり目を向けていると、「コロナ対策禍」に見舞われて自滅することになる。いま日本に必要なのは、財政の立て直しと社会保障制度の維持だ。(『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』矢口新)

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プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

角を矯めて牛を殺すな

「角を矯めて牛を殺す」とは、曲がった牛の角をまっすぐにするために叩いたり引っぱったりすると、牛は弱って死んでしまうことから、わずかな欠点を直そうとして、かえって全体をだめにしてしまうことをいう。

日本のコロナ対応と政策には、それが見られる。

コロナの恩恵

毎日のようにコロナ感染者数の増加が報じられている。PCR検査数の増加が要因の1つではあるだろうが、重症者数も死者数も増え続けているので、状況が確実に悪化しているのは疑いがない。

医療体制が逼迫(ひっぱく)しており、最重要課題は医療崩壊を防ぐことだと言えそうだ。
※参考:国内の発生状況など – 厚生労働省

このようなご時世に、私があえて「コロナの恩恵」と題するには、いくつかの理由がある。

1つ目は、何事にもリスクとリターンの両面があること。
2つ目は、ポートフォリオ運用のように賭ける部分と、ヘッジの部分のバランスを見ることが何かと役立つこと。
3つ目は、ヒトはどんな形ででも、いつか死ぬということだ。

ところが、目にし耳にするのはコロナの脅威面ばかりだ。そこで、あえてここでは、コロナのリターン面を強調することにした。

そう思ってしまえば、世界の多くの国々のように、コロナの脅威面だけを強調し、その為にはどんな犠牲も辞さないような政策を採るのは戦略的に間違っていることが分かる。人道的に正しいかどうかも分からない。何故なら、ロックダウンや営業自粛は弱者を直撃し、悲劇に繋がるケースも少なくないからだ。

それでも感染者や死者が増え続けるという目先の危機をどうするのかと懸念する人たちはいることだろう。確かにそれはコロナの怖い面だ。

そこで、ご存知の方々も多いとは思うが、興味深いニュースをお伝えする。

1~10月の日本の死亡数は前年同期より1万4千人少ないことが厚生労働省の人口動態統計(速報)で分かった。<中略>

11月以降に新型コロナによる死亡数が急増しているものの、年末までの死者は千数百人(矢口注:実際は3,400人ほど)となる見通しのため、11年ぶりに国内の死亡数は前年を下回る可能性がある。

同統計の速報値によると、1~10月の死亡数は全国で113万2904人。前年同期は114万7219人で、1万4315人(1.2%)少ない。<中略>

死因とされた病名などのうち、公表済みの1~7月分で最も減少したのは、新型コロナや誤嚥(ごえん)性を除く肺炎で、前年より9137人(16.1%)減少し、4万7680人だった。インフルエンザは2289人(71.1%)減って932人にとどまった。

出典:死亡1万4千人減 国内1~10月: 日本経済新聞(2020年12月28日配信)

最も増加した死因は老衰で、5185人(7.5%)増えた。在宅や施設での医療・介護の充実で老衰は増えており、19年はがん、心疾患に次ぐ日本人の死因の3位。前年の伸び率(約10%)より低かった。

自殺は7月以降増えており、11月までに約1万9000人で、前年を550人上回っている。自殺防止対策の充実で2010年から10年連続で減少したが、20年は増加に転じる恐れがある。がんの死亡者数は微増だったが、受診や検診を控える人が多く、来年以降に死亡数がさらに増える可能性がある。7月までの受診者総数は80万人弱で、前年の4割に満たない。

出典:自殺 夏から増加続く: 日本経済新聞(2020年12月28日配信)

コロナの被害と恩恵を相殺すれば、死者数は少なくとも1万人以上減少と恩恵の方が大きいと言えるのだ。減少は11年ぶりだということだ。

一方で、自殺者は11年ぶりの増加だという。インフルエンザとコロナだけを見ても、恩恵が被害を上回り、例えば2020年秋にインフルエンザ・シーズンを終えたオーストラリア(現地では春)でも9割以上の激減だった。

Next: コロナ禍ではなく「コロナ対策禍」なのは明白だ

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