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日本が知るべき「新型コロナの恩恵」いま本当に必要な経済対策とは何か=矢口新

財政を建て直さない限り日本の社会保障制度は守れない

日本政府や地方自治体も、当初の「1~2週間の辛抱」のはずが、「今が山場」「今が山場」と、オオカミ少年のように危機を煽り続けたために、かえって「自粛疲れ」を誘発してしまった感がある。経済活動も止めたり、期間限定で加速させたりと、危機を煽ったり軽視したり、パニック的なものだった。

各国政府のコロナ対策は国民の総合的な福利厚生を鑑みれば、「少なくとも1年から2年、長期化すると5年程度もしくはそれ以上の期間」継続できる経済的な余裕があって、初めて正当化できるものだ。

一方で、そんな国はどこにもなく、なかでも日本政府は世界で最も脆弱な財政を抱えている。これでは敵の城攻めに慌てふためき、蓄えもないのに籠城を選んだようなものだ。自滅は目に見えていた。

コロナという角の曲がりより怖いのは、牛そのものが死ぬことだ。疫病はコロナだけではない。国民の死亡原因はコロナ死だけでない。コロナや今後の疫病に備えるだけでも、医療体制や社会保障制度の充実は不可欠なのだ。そしてそれを保証するものは経済力だ。

私はそうした危機感をもとに、1冊の著書を上梓する予定だ。現状では、1つの出版社が検討してくれているが、読者の皆さんにも心当たりがあれば、ぜひ私に連絡して頂きたい(メールアドレス:dealersweb@msn.com)。応援メッセージもありがたい。また、できれば知人の方々にも広めて頂いて、できるだけ多くの方々と危機感の共有を願いたい。でなければ、日本の社会保障制度は守れないと言える。

日本の社会保障制度の崩壊はこうして防ぐ:有権者1億人の教科書

以下にタイトル・まえがき・目次を掲載する。まだ修正される可能性があるが、現状では7万6,473字、図表63枚となっている。

日本の社会保障制度の崩壊はこうして防ぐ:有権者1億人の教科書
グラフで読み解く消費税と社会保障制度の関係:図表63枚

<まえがき:税収増が見込めない税制>

読者の方々は、財務省のホームページに「これからの日本のために財政を考える」と題して、このようなグラフがあるのをご存知だろうか?

日本国財政収支の推移(出典:財務省)

日本国財政収支の推移(出典:財務省)

上図は、1975年度から2020年度までの日本の財政収支の推移だ。黒色の折れ線グラフが歳出の推移。青色の折れ線グラフが税収の推移。両線に挟まれたうす橙色の部分が財政赤字幅の推移。赤色の棒グラフが赤字をファイナンスする国債の新規発行額の推移で、基本的に赤字幅に対応している。

このあんぐりと口を開けた鰐(ワニ)の絵は少なくとも数年前から描かれていて、拡がるばかりで閉じることができない日本の財政赤字を象徴してきた。それが、右端の歳出拡大では上あごが外れた状態となっている。つまり、2020年度の税収が60兆円余りとされているのに対し、歳出は160兆円を超えてきているのだ。よく見れば鰐のつぶらな目には、赤い(血の?)涙が浮かんでいるようにも見える。

この63.5兆円とされる税収はコロナ禍と、その対策で経済活動を止めたために、55.1兆円に大きく下方修正されており、一方の歳出は止めた経済を立ち直らせるための第3次補正予算では175.7兆円に増額された。このことは、2020年度の財政赤字は110兆円を優に超えることを示している。実際に90.2兆円とされている新規国債発行額は112.6兆円となる見通しだ。これは赤字の穴埋めとされるものなので、何と、税収の2倍を超える赤字幅となるのだ。

日本国財政収支の推移(出典:財務省の図に書き込みしてリサイズ)

日本国財政収支の推移(出典:財務省の図に書き込みしてリサイズ)

このグラフの財務省における作成者の意図は知らないが、私の見方と近い人たちのようで、1990年度の税収60.1兆円をわざわざ書き込んでくれている。また、リサイズ前の縦長の図の方が赤字の深刻さが際立って見える。このことが教えてくれるのは、日本の税収は30年間も増えていないということだ。一方で、歳出は概ねこれまで通りに増え続けてきたので赤字幅が拡大、政府の借金が積みあがってきたことが分かる。

Next: 諸悪の根源は「消費税」。コロナ禍より怖い社会保障制度の崩壊

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