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トランプより戦争好き?バイデン政権にオバマ譲りの軍事衝突リスク=江守哲

注目は外交・安全保障面

さて、我々の関心は、やはり外交・安全保障面である。トランプ氏がめちゃくちゃにした国際情勢の枠組みを、バイデン氏が再構築できるのか。これは非常に難しい仕事である。

私自身は可能性はゼロではないと考えているが、すでに歴史的には米国は落ちぶれていかざるを得ない。急激な変化ではないが、徐々にその方向に行かざるを得ない。

その意味では、バイデン氏の調整力は、一時的に機能する可能性は十分にある。しかし、それが抜本的な問題解決につながることはないだろう。とにかく、中国の台頭は米国の想像を超えている。もうすでに止められないところに行っている。バイデン氏も現実を知れば、愕然とするかもしれない。

北朝鮮問題も難題である。これもトランプ氏が、それまでの米国のスタンスを完全に逆の方向に転換してしまった。北朝鮮はトランプ氏が大統領でなくなることで、態度を硬化させる可能性がある。実際に、その兆候が見て取れる。これは危険なサインである。

トランプ政権以上に戦争勃発のリスクは高い

バイデン氏は、「われわれは同盟を修復し、世界に再び関与する」とし、トランプ氏の「米国第一主義」から国際協調路線への転換を宣言した。しかし、それはかなり難しいだろう。バイデン氏はオバマ政権で副大統領を2期8年務めている。そのオバマ政権が、世界の枠組みをおかしくしたことは正しく理解されていない。

バイデン氏は就任式で「今日は民主主義の日だ」と高らかに宣言したが、過去の政権の中でも大量虐殺を行ったのはオバマ政権であり、その時のナンバー2だったのがバイデン氏である。トランプ氏と比べても、人道的な面ではトランプ氏のほうがよほど平和主義者である。

このように考えると、実はトランプ政権以上に戦争勃発のリスクがあると考えたほうがよいといえる。バイデン氏は21分間の大統領就任演説で、「民主主義」という言葉を計11回使用したという。これは米メディアによると、歴代大統領の就任演説では最多だったという。しかし、やってきたことと言っていることは、トランプ氏よりも格差がある。

また、「団結」という言葉を使い、耳触りのよい言葉を並べている。バイデン氏が米国社会の分断を最大の課題と捉えていることがわかる。しかし、この問題は解決されることはないだろう。

環境優先への再転換

個人的な興味は、バイデン氏が掲げる地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰と、環境政策である。トランプ政権はこれらの問題を棚上げし、無視した。

しかし、バイデン氏はこれを元に戻そうとしている。早速、カナダから米中西部まで原油を運ぶ「キーストーンXLパイプライン」の建設認可を取り消し、トランプ政権が最近許可したアラスカ州北東部の北極圏国立野生生物保護区での石油・ガス開発に向けたリース活動に停止措置を講じている。

環境優先である。そして、2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする目標も掲げた。これが実行可能なものかどうか、かなり怪しい面もある。政治的な分断や化石燃料産業の反対、米国の政策転換に国際社会が懐疑的であることなどから、道のりは容易ではないだろう。

米シェールオイル企業も政策の転換に戸惑うだろう。米国の石油・ガス業界団体である米石油協会(API)は、キーストーンXLパイプラインの建設許可取り消しは「後戻りだ」と批判している。「この見当違いの動きは、米経済の回復を妨げ、北米のエネルギー安全保障を損ね、米国最大の同盟国の1つとの関係を悪化させる」としている。

このように、バイデン氏の政策を明確に反対する団体もある。バイデン氏の政策は、見栄えは良いが、実効性がかなり怪しいものが少なくないといえる。

Next: 対中政策は中途半端に。もはや中国の台頭は止められない

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