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トランプより戦争好き?バイデン政権にオバマ譲りの軍事衝突リスク=江守哲

バイデン政策が誕生した。我々の関心は、やはり外交・安全保障面である。トランプ氏がめちゃくちゃにした国際情勢の枠組みを、バイデン氏が再構築できるのか。これは非常に難しい仕事である。実はトランプ政権以上に戦争勃発のリスクがあると考えたほうがよいだろう。(『江守哲の「ニュースの哲人」~日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ』江守哲)

本記事は『江守哲の「ニュースの哲人」~日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ』2021年1月25日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリファンドマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

次の大統領選は3年後、トランプは動くのか?

米国では、バイデン新政権が誕生した。この話は後ほどするにして、ホワイトハウスを去ったトランプ「前」大統領がいまだに取り上げられるところが、トランプ氏のインパクトの強さを物語っているといえるだろう。

トランプ氏は19日、20日の退任を前にビデオメッセージを発表した。いつものことではあるが、トランプ氏が外交面での自らの功績をたたえている。また、「新政権に幸運を祈る」ともしたが、バイデン氏の名前には言及しなかった。最後までトランプ氏らしい言動だったといえる。

トランプ氏は昨年の大統領選での敗北を認めることを拒み続けた。そして、20日のバイデン氏の大統領就任式にも出席せず、フロリダに飛んでしまった。就任式に前任の大統領が出席しないのはきわめて異例であり、152年ぶりとのことである。いかにトランプ氏がトリッキーな人物であるかがわかる。いまさらながらではあるが。

トランプ氏はメッセージで、「20日正午に新政権に権限を移譲するに当たり、われわれが始めた動きはまだ始まったばかりだということを知っておいてほしい」としている。これは非常に怖い発言である。これが何を意味しているのか、3年後にわかるだろう。3年後には、次の大統領選の準備が始まる。

トランプ氏は1月6日に集会で、大統領選で不正があったと主張し、バイデン氏の大統領選勝利認定手続きを行っている連邦議会議事堂まで行進するよう支持者に呼び掛けた。その後、支持者たちは議事堂に乱入し、5人の死者が出る事態に発展した。このようなことが、これから全米で起きる可能性がある。

下院はこの事件を受け、反乱を扇動したとして大統領を弾劾訴追する決議案を可決した。これにより、トランプ氏は2回の弾劾訴追を受けた史上初の米大統領となった。また、トランプ氏の退任後、上院で弾劾裁判が開かれる予定である。退任後に行われるのもまた異例である。

しかし、このようなことは、トランプ氏にとっても大した話ではないだろう。すでにトランプ氏は達観している。開き直っているともいえる。こうなったときの人間は怖い。

トランプ氏は退任メッセージで、「政治への暴力はわれわれが米国人として大切にするすべてへの攻撃だ。決して容認されない」としたが、それを先導したのはまさにトランプ氏である。トランプ氏はこの事件によって、国民を容易に扇動できることを知った。これは今後、非常に強い武器になる。

近年稀な戦争を始めなかった大統領

トランプ氏は今後、どのように情報を発信していくだろうか。

議会襲撃事件の後、暴力をあおるリスクを理由にツイッターはトランプ氏のアカウントを永久停止している。情報の発信ツールを奪われると、どのように支持者を扇動するのか、見ものである。

一方で、興味深い発言も行っている。それは、「過去数十年で初めて、新たな戦争を始めなかった大統領であることを特に誇りに思う」というものである。これは確かである。平和主義者のような顔をしながら、最も厳しい対処をしたのはオバマ大統領である。これに比べると、トランプ氏は平和主義者だったともいえる。

もっとも、トランプ氏は政治家ではなく、人生の決断が必要な場面で、国単位で物事を考えてきたわけではない。その意味では、戦争や軍事面から最も遠い人物である。臆病だったともいえる。とても人殺しなどできないのである。だからこそ、イランに対しても堂々と「戦争はしたくない」と言っていたのである。

トランプ氏は最後に、バイデン氏に置き手紙をしたようである。これは、これまでの米大統領の交替時の半ば慣習になっているようである。しかし、結局バイデン大統領と顔を合わせることなく、就任式も欠席してホワイトハウスを後にしている。今後も直接話すことはないのだろう。

バイデン大統領が、「トランプ氏と話すまで、手紙の内容は公にしない」としている。大人の対応である。それが正しい対応であろう。しかし、いずれその中身は公開され、その内容にも賛否両論が飛び出すことになるだろう。

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