「最悪」のまま続く米中関係
一方、対中政策は非常に興味深い。これまでのトランプ路線を完全に否定することもできず、とはいえ、そこまでの強硬な態度にも出られない性格であろう。その意味では、今後の米国の対中政策は中途半端なものにならざるを得ないだろう。
その中国だが、バイデン政権がトランプ前政権の対中強硬路線を継承することへの警戒感が強いという。国交正常化以来、最悪と言われた米中関係がバイデン政権になったからといって「リセット」されるとも思えない。
バイデン氏は、過去のオバマ政権の際の政策を持ち出す可能性がある。オバマ政権は、アジア太平洋重視の「リバランス政策」を取った。トランプ政権もインド太平洋戦略や日米豪印4カ国の連携を進めた。何とか中国の台頭を抑制しようとしたが、機能したとは言えない。そして、その間に中国は着実に力を付けた。
中国も米国の戦略は十分に理解している。米国が中国以外のアジア諸国との連携を強め、「対中包囲網」を形成することに神経をとがらせている。王毅外相は、中国を封じ込める「偽の多国間主義」に異議を唱え、バイデン政権発足前からけん制している。
このような中国に対して、米国は対中政策ではまとまっている。このあたりは非常に興味深い。米議会は超党派で対中強硬姿勢を示しており、米国民のなかでも反中世論が高まっている。バイデン氏もトランプ政権と同様に、中国を「最も重要な戦略的競争相手」と位置付けている。
また、国務長官候補のブリンケン氏は「中国を打ち負かすことができる」と対抗心を隠していない。さらに、財務長官候補のイエレン前FRB議長も、同様に中国に対抗する意思を示している。
イエレン氏が先の議会の公聴会で、そのような発言をしたのには正直驚いた。政治気取りなのかわからないが、これまで慎重な発言が目立っていたこともあり、かなり強気なスタンスであるといえる。
もはや中国の台頭は止められない
中国サイドも警戒感を解いていない。中国社会科学院米国研究所の袁征副所長は、「バイデン政権は民主、自由、人権、ウイグル、チベット、香港、台湾など、多方面で対中圧力を強める」している。そのうえで、米国側が処理を誤れば両国関係の不確実性が増し「戦争の可能性すら排除できない」と警告している。
中国も短期間で急成長したとはいえ、やはり米国のことは怖いのである。そのあたりを米国が正しく理解しているかが、今後の交渉するうえで重要なポイントになる。少なくとも、トランプ・ポンペオラインのような強硬姿勢では、まとまるものもまとまらないだろう。
いずれにしても、米中関係が大きく改善し、安定の方向に進むことはない。紆余曲折を経ながらも、最終的には中国が台頭していくことになる。この流れは誰にも止められない。この流れにいち早く気付いたものが、最終的に勝利者になるだろう。
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本記事は『江守哲の「ニュースの哲人」~日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ』2021年1月25日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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『江守哲の「ニュースの哲人」~日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ』(2021年1月25日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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