トランプ新党「愛国党」の役割は?
ところで、ウォール・ストリート・ジャーナルによると、トランプ氏は最近、複数の側近と新党「愛国党」の旗揚げについて協議したと報じている。ただし、新党設立には膨大な資金と時間を要し、トランプ氏が真剣に考えているかは不明という。しかし、このような動きは容易に想像できる。
共和党内部からも、トランプ離れが進んでいる。トランプ氏が4年後に共和党の候補者として大統領選に臨むのは、よほど挽回しないと難しい。そうであれば、別の組織を立ち上げ、そこを起点に活動するということを考えてもおかしくはない。
トランプ氏が「米国分断の祖」として、将来揶揄される立場になる可能性は十分にある。そのようなことになれば、それこそ米国は大変なことになる。バイデン氏も内政に余計な時間を取られ、外交がおろそかになるだろう。米国にはこれから「地獄の時間」が待っているのである。
今後もトランプ氏から目が離せないといえそうである。
バイデン「米国を1つに」
さて、そのバイデン氏が20日、連邦議会議事堂前での就任式で宣誓し、第46代大統領に就任した。史上最高齢での大統領就任である。いまや長寿の世界である。また、年齢はひとによって感じ方も違う。あまり年齢にこだわるのは良くない。先入観は持たないことである。
そのバイデン氏だが、「米国を1つにまとめ、すべての国民を団結させることに全霊をささげる」と演説した。社会の分断が深まる米国をどのようにまとめ、そして導いていくのか、まさにいきなり手腕が問われる局面である。これも前任者のトランプ氏が汚したあと始末である。
一方、すでに報じられているように、副大統領には女性では初めて黒人のカマラ・ハリス氏が就任するなど、閣僚級ポストにも多数の女性や人種的少数派が起用され、新政権は多様性を重視した布陣となっている。新政権が目指す方向性が明確に出ている点は素晴らしい。
しかし、それが実力と結びつくのか、ここからが正念場である。私自身は予断を持たずに見ていきたいと考えている。ただし、第一印象は「小粒」である。しかし、見た目と実力が異なるときもある。この点には要注意である。
トランプとの違いをどう評価されるか
バイデン氏は、少なくとも、トランプ氏のように、すぐに首にしたり、評価を下すようなことはしないだろう。しかし、逆に言えば、実力が伴わない人選だった場合には、悲惨なことになる。政権運営に力強さがなければ、いまの難局は乗り越えられないだろう。
さて、バイデン氏は2週間前にトランプ前大統領の支持者が襲撃した議会西側で宣誓したが、その後の就任演説で「民主主義は貴重で、壊れやすいことをわれわれは知ったが、民主主義は勝利した」とした。そのうえで、対立する国民に「私たちは尊厳と敬意をもって互いを扱うことができる。叫ぶのをやめ、感情を鎮めよう」と呼び掛けた。
いまは言葉で粘り強く問いかけるしかない。しかし、バイデン氏の人のよさが、米国民に伝わるのだろか。まだまだ未知数である。
また、トランプ氏が放置した新型コロナについて、バイデン氏は「最も過酷で死をもたらす時期にある」とし、「この暗い冬を乗り切るには全力が必要だ。一晩泣いても朝には喜びが来る」とし、収束に向けた決意を示した。しかし、これも具体策が打たれないと、米国は悲惨なことになる。