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中国人はもうネットを読まない。進化する「ムービー検索」で世界激変、報道もECも主役は15秒動画に=牧野武文

ムービー検索は世界をどう変えるか

では、なぜ、ムービーを直接検索できる検索エンジンが必要なのでしょうか。それは、インターネットの中心コンテンツがテキストからショートムービーに移り始めているからです。

古い時代の百科事典は、テキストベースのウィキペディアでしたが、今後、新しい時代の百科事典は、張楠CEOが言うように、抖音などのショートムービープラットフォームになる可能性があります。

それは、あまりにもショートムービーを過大評価しすぎなのでは?と感じられる方もいらっしゃるかと思います。しかし、あらゆる指標が、テキストの終焉を指し示し、次世代はショートムービーになることを示唆しています。インターネットは、商用化、モバイル化の次の革命的な変化として、ショートムービー化が起こる可能性は高いと思います。

と、私個人が主張するだけでは説得力がありませんので、どのような指標がショートムービー化を指し示しているのかをご紹介します。今回は、インターネットのショートムービー化についてご紹介します。

インターネットのショートムービー化

抖音がEC部門を本格化させています。以前から、抖音の中でライブコマースを中心としたECは行われていましたが、2020年6月にはEC部門を設立し、11月には独身の日セールを行い187億元(約3000億円)を売り上げました。さらに、12月にはEC部門を拡充し、本地直営営業センターを設立、すでに1万名以上のスタッフが働いているといいます。

結局、2020年のEC流通総額は5000億元(約8.3兆円)になったというから驚きです。これは日本のアマゾンの約3倍にあたります。抖音のようなショートムービープラットフォームで、そんなにたくさんの商品が売れるというのはにわかには信じがたい話です。

しかし、利用者規模を考えれば納得がいきます。抖音のMAUは5.5億人です。一方、日本のアマゾンのMAU(2020年4月)は、調査会社ニールセンの推定によると0.52億人となっています。抖音はほぼ10倍の利用者数で、売上は3倍と考えると、納得のいく数字になります。

実際に、抖音を使って、商品を検索してみると、「なるほどこれは買ってしまうな」と納得してしまうところが多々あります。抖音には、ショートムービーとライブ配信の2つがあって、それぞれ商品で検索をすると、商品説明のショートムービー、配信中のライブコマースが見つかります。

ライブコマースについては、当メルマガのバックナンバー「vol.029:店舗、ECに続く第3の販売チャンネル「ライブEC」」でもご紹介したように、スマホのライブ配信システムを使って、日本のテレビショッピングやリモートの実演販売をする感覚です。実演者がみなそれぞれに芸達者であるため、思わず衝動買いをしてしまいますし、ライブコマースの配信は無数にあるため、次から次へと見ていくと、賑やかな商店街を歩いているような気分にさせられます。

一方、商品ショートムービーの方は、商品名で検索をすると見つかるもので、商品の説明ムービーだったり、あるいはライブコマースの一部を切り取ったものです。これがものすごくわかりやすいのです。

例えば、「こするだけでこんなにきれいになります」という清掃用品や、「こんなにたくさん入って整理整頓ができます」という収納用品をイメージしてください。これを日本のアマゾンで買おうとすると、商品ページを見て、説明を読み、電子チラシのような画像を見て、あとはレビューを見て判断することになります。しかし、抖音では、15秒から30秒のムービーで、どんな商品なのかがすぐにわかります。商品を売るために製作されているムービーなので、誇大表現になっているところはあるとしても、購入意欲をそそります。ムービーをタップすると、商品ページに飛び、サイズなどの詳細情報が表示され、いちばん下の購入ボタンをタップすれば、決済が行われ購入することができます。

つまり、商品の説明は、テキストと画像よりも、ショートムービーの方がはるかにわかりやすく、訴求力が高いのです。洋服を買うときも、スタイルのいいモデルさんが着ている静止画よりも、普通の販売スタッフが着ている動画の方が、実際に着てみた時のシルエットや素材の質感までわかります。

最近では、タオバオなど他のECでも、商品紹介ページにショートムービーを掲載する例が増えています。

ショートムービーは、張楠CEOが言うように、百科事典としても有効です。例えば、クランクという機構があります。自動車エンジンのピストンの直線的な往復運動を回転運動に変換する仕組みです。紙の百科事典を見たら、図は出ているものの、どういうものなのか理解するのに時間がかかると思います。しかし、これをムービーで見たら瞬時に理解ができます。

もちろん、仕組みの詳細や歴史的な経緯、どのような産業応用がされているかなどはテキストで読むしかありませんが、先にムービーを見て、仕組みを理解してから読めば、理解度も格段にあがります。つまり、多くのもので、先にムービーを見て、基本的なことを直感的に理解し、それからテキストを読んだ方が理解が早いのです。

Next: もはやインターネットの入り口は検索ではなく「コンテンツ」に

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