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ワクチンマウントは大企業自慢に変化か。“職域接種”開始で懸念される「打たない」「打てない」人への逆風

新型コロナワクチンの「職域接種」が21日から本格的にスタート。大企業を中心にワクチン接種が進んでいる模様が報じられている。

21日から職域接種を始めた伊藤忠商事の東京本社には、加藤官房長官が訪れて社員らが接種を受ける様子を視察。加藤官房長官は「集団接種と相まって加速化にもつながることを期待している」とコメントしている。

いっぽうで、21日からは全国17の大学でも接種が開始。文部科学省によると、今月18日までに261大学から職域接種に関する相談があり、174大学が接種の申請を行ったという。

懸念された「正規・非正規の対応差」は?

職域接種の実施が決まった際に、ネット上を中心に取沙汰されていたのが、「正規社員と非正規社員の間で対応に差が出るのでは」という問題だ。

実際、加藤官房長官が6月頭に職域接種を開始する方針を記者会見で明かした時に、接種を受けられる対象について「非正規で働く人やアルバイトを接種対象とするかどうかはそれぞれの主体で判断してもらいたい」と発言。これが上記のような「対応差が出るのでは」という懸念に繋がった。

しかしその後、厚生労働省が職域接種の実施ガイドラインを作成した際に、接種に当たっては正規・非正規、契約・派遣などの雇用形態による一律の区別は望ましくない、と同省の「手引き」に明記。さらに手引きでは、接種を強制することがないよう留意することも求めた。

その甲斐もあってか、毎日新聞によるアンケート調査によると、職域接種を「実施する」「実施する予定」と答えた98社のうち、9割近い86社が非正規雇用の従業員も接種対象にすると回答するなど、懸念されていた「正規・非正規の対応差」は一応のところ解消されそうな状況である。

同調圧力でさらに追い込まれる「ワクチン反対派」

職域接種が進めば、各自治体による接種も空くようになると、早期の接種を待ち望む層からは期待の声が多くあがっている今の状況だが、そのいっぽうで危惧されているのが「打った人」あるいは「打ってない人」の間で発生する軋轢である。

高齢者に向けた接種が始まった時点ですでに、接種済みの高齢者がそうでない人に対してマウントを取るという、いわゆる「ワクチンマウント」が発生していることが、多く指摘されていた。それが職域接種のスタートによって、今度は「職域接種が受けられる大企業勤務」という自慢も相まってのマウントに変化していく……との懸念が、ネット上では広がっているというのだ。そもそも、最終的に希望者は全員受けられる接種の早い・遅いで自慢するというのもアホらしいが、実際にやられたらやられたで相当イラっとしそうである。

さらに今後の接種率アップによって事態が深刻化しそうなのが、副作用への危惧や自身の体質による問題などを理由に、あえてワクチンを接種しないという決断をした人たちへの逆風だ。

職域接種に関連しては、すでにワクチンを打たない人に対する「ワクチンハラスメント」とも言える事象が起きている。大阪市の東成区役所では、接種を希望しない職員のリストが作成され、各部署の管理職にくわえ一部部署では一般職員にもメールで転送されていたと判明し、区の担当課が「職員の気分を害するとは思わなかった。配慮が足りなかった」と釈明する事態に。さらに一般企業でも、職域接種を受けないことを同僚に知られてしまい、なぜ打たないのかと複数人から聞かれたり、奇怪な者を見るかのような視線を向けられたりといったことは、結構多く起きているようだ。

今はまだ「ワクチンマウント」が成立するほど、接種者が少ない状況なのでまだいいものの、今後接種がどんどん進んでいけば、日本人特有の横並び意識や同調圧力によって、「ワクチンを打たない」と決めた人にとって、どんどん肩身が狭くなる雰囲気になっていくことは目に見えている。すでにワクチンに対して懐疑的なスタンスの人のなかには、ネット上で接種への抗議を煽ったり、デマを拡散したりする動きが出ているなど、その姿勢が先鋭化しているとの指摘もされており、その軋轢が今後大いに心配されるところである。

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