fbpx

中国共産党100周年で見えた5つの衰退ルート。権力維持が目的の「浮遊経済」へ成り下がる=勝又壽良

中国共産党は、7月1日で創立100年を迎える。一党独裁はどこまで続くか、習近平がどこまで権力を維持し続けるかに注目が集まるが、すでに5つの綻びが見えている。100周年以降、中国は共産党の権力維持が目的だけの「浮遊経済」へ成り下がるだろう。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

【関連】なぜ人権にうるさい韓国がウイグル問題に触れぬ?二番煎じの米韓会談で文在寅は窮地に立つ=勝又壽良

※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2021年6月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

中国共産党100周年、習近平の独裁は「無期限」に続く

中国共産党は、7月1日で創立100年を迎える。

最大の注目点は、中国共産党中央委員会総書記である習近平氏が、2022年に迎える2期10年という従来の任期制を廃して、どこまで中国トップの座である国家主席の座に止まるかである。

習氏は、2035年までの経済目標を掲げている。それまでは、国家主席を務めるという意思表示と受け取られている。2012年に国家主席の座に就いたから、2035年までその座に止まれば、23年間もポストを独占することになる。

共産党では、旧ソ連も同様に超長期政権が大きな特色である。その長期政権ぶりは、次のようなものであった。スターリンは、死亡するまでの32年間、ソ連共産党のトップに君臨した。後継者となったブレジネフは18年間も務めた。

中国でも旧ソ連と同じ超長期政権である、毛沢東は死亡するまでの27年間、その座を独占した。その間に、国民に対して大躍進政策(1958~61年)と、文化大革命(1966~76年)という大混乱時代を経験させた。

この混乱を終息させ、経済復興に着手した鄧小平は、最高指導者として11年務めて引退した。その後は、2期10年に限定して、江沢民と胡錦濤が国家主席の任を全うした。

習近平氏になって事態は一変した。憲法改正によって、事実上の「無期限任期制」になったのである。習近平氏は、スターリンや毛沢東と同じく、死亡まで国家主席であり続けられる。

これが、中国にとってどのような事態を招くかだ。中国共産党創立100年の後に、中国はどのようなコースを辿るのか。世界にとっても大きな影響が出る。それは、現在の領土拡張政策が止むのかどうかで、戦争と深く関わるからだ。

長命で5つの綻び

旧ソ連共産党は、その運命が80年(1912~1991年)で終わった。これに比べれば、中国共産党は、この7月1日で100年を迎える。すでに、ソ連共産党よりも20年生き延びた計算だ。

中国共産党は、ソ連共産党の実現できなかった世界覇権を目指している。だが、その実現性には明らかな疑問符がついている。

その問題点を列挙すれば、次の5点に要約できよう。

1)国内的には、経済の潜在成長率が急速な鈍化に向かうことである。具体的には、労働力人口の減少である。直近では、生産年齢人口の減少として現れる。超長期的に言えば、合計特殊出生率の低下によって、中国の潜在成長率低下が確実に予見されるのだ。この動かし難い事実が横たわっているにも関わらず、世界の論者はこれを完全に無視している。例えば、現在の経済成長率をそのまま将来に投影して、2027~28年ごろに米国経済を抜くと断定している。極めて乱暴な議論である。

2)米国の潜在成長率を極端に過少評価している。これは、トランプ政権時代の国内的対立が永遠に続くという想定と、米国の労働力人口が中国よりもはるかに豊富という現実を見落としている結果である。さらに、米国で労働市場の逼迫化が起れば、移民を増やして労働需給を緩和できるという利便性を忘れている。中国では、移民を望むことは無理である。逆に、新疆ウイグル族の出生率を強引に低下させて、「断種」を狙うという非人道的な振る舞いをしている。

3)中国には、古来より「人権思想」が存在しない。宗族社会であることから、「私」という概念を邪悪なものとして扱い、「私たち」という概念が成立している。こういう社会では、新疆ウイグル族の弾圧が治安維持上、許されると見る肯定的な中国世論をつくりだしている。この人権弾圧が、国際社会では摩擦を生んでいる。中国を孤立させる決定的な要因なのだ。

4)中国の新疆ウイグル自治区では、100万人以上が不当に拘束されていると報告されている。この件について、国際社会の40カ国以上が6月22日に共同声明を発表した。国連人権高等弁務官ミシェル・バチェレ氏が、早急に自治区入りして調査を認めるよう中国に求めたものだ。前記の40ヶ国以上には、先進国がすべて網羅されている。これが通商上において今後、中国の経済活動に大きな制約要因を課すはずだ。

5)これまでの「政冷経熱」という時代は、終わったと見るべきである。従来は、政治的な対立があっても、通商面ではこれを分離して行なってきた。西側諸国では現在、中国の人権弾圧や領土拡張意欲をこれ以上、放置しないというコンセンサスが出来上がっている。G7やNATO(北大西洋条約機構)が、団結して中国封じ込めに動き始めたのだ。安全保障政策が、経済優位性の前に立ちはだかっている。

Next: 軟弱すぎる内需主導経済基盤、中国社会は老衰へ向かうか

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー