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中国大手スーパーが軒並み存続危機、なぜテック企業に惨敗?日本でも起こる小売の地殻変動=牧野武文

「テック企業」以外には不可能

永輝には残念ながら、これだけの技術開発力はありません。エンジニアチームを育成すればいいのかもしれませんが、物流と小売が基本である永輝にそれだけの投資をするというのは簡単な決断ではありません。

さらに、超級物種の54店舗は、ほとんど隣接することなく、孤立をして点在をしていました。そのため、隣接する店舗の配送スタッフが連携をするということ自体ができません。そのような比較データがあれば面白いのですが、フーマフレッシュの配送効率と超級物種の配送効率を比較すると、雲泥の差になっているはずです。

つまり、「オンライン小売とオフライン小売を深く融合」させるのではなく、「オフライン小売にオンライン小売を接着した」状態になっていたため、何のシナジー効果も生まれず、むしろ業務フローが複雑になって、全体の業務効率そのものを低下させていた可能性があります。

永輝本体のスーパーも到家(宅配)サービスを行なっています。「永輝生活」というアプリを使って宅配注文をすることができます。もうひとつEC「京東」のデリバリーサービス「京東到家」にも対応しているので、2つの方法で宅配注文をすることができます。しかし、売上は全体の10%でしかありません。

詳細な数字が、永輝の2020の年度報告書に記載されているので、フーマフレッシュと比較してみましょう。到家サービスの売上は59.1億元で、1日に23万件の注文があります。1,000店舗で対応しているので、ここから平均単価や1日1店舗あたりの注文件数がわかります。すると、平均注文単価は70.4元、1日の1店舗あたりの注文件数は230件になります。永輝では京東到家にも対応していますが、こちらは詳細な記載がありませんが、合計しても1日1店舗のオンライン注文件数は300件から400件あたりと推定するのが自然です。フーマフレッシュの5,000件とは桁が違っています。

コロナが追い風

一方、フーマフレッシュはどうなのでしょうか。フーマフレッシュは、株式を公開していないので、経営数字は時折フーマフレッシュが発表する数字を使うしかありません。当然、いい部分の数字だけを発表しているのだと思われますが、虚偽の数字はさすがに発表できないと思います。

コロナ禍の前と後で、どのような変化があったかという数字をフーマフレッシュは発表しています。

それによると、コロナ禍以前の1日1店舗のオンライン注文件数は非公表ですが、5,000件という目標はじゅうぶんにクリアできるというものでした。それがコロナ後にはなんと3.2倍に増加をしていると言います。素直に信じれば1.5万件以上です。

実際、新型コロナによる外出自粛期間は、3倍になったといっても納得がいきます。この時期、30分配送がもはや維持できず、翌日配送になった店舗もあったほど注文が殺到しました(宅配だけでなく、出荷地からの配送も滞る事態だったようです)。今は、落ち着いて多少下がったとしても、1万件前後の注文件数になっているのではないでしょうか。

しかし、面白いことに、注文単価は以前は80元前後だったものが、40元に低下をしているそうです。フーマフレッシュは、30分無料配送なので、まとめ買いをせず、必要な時に必要なものだけを注文する買い物の断片化が進んでいるようです。

その結果、コロナ後はオンライン注文の売上が全体の売上の70%を超えたとのことです。

これがフーマフレッシュの圧倒的な坪効率を生み出しています。売り場面積1平米あたりの月の売り上げを比べると圧倒的で、スーパーの平均の4倍以上になっています。しかも、これはコロナ前の数字に基づいて計算したものです(各スーパーは2020年の数値)。現在は、この差はもっと開いているはずです。

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  • vol.067:ビジネスとして成立をし始めたeスポーツ。老舗企業も注目する新たなコンテンツ産業(4/12)
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  • vol.061:再び注目を集める無人小売テクノロジー。非接触と人材採用がキーワードに(3/1)

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  • vol.058:再び成長を始めたTik Tok。テンセントのWeChatと正面から激突(2/8)
  • vol.057:テック企業に蔓延する996。社会問題化する長時間労働問題(2/1)

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  • vol.044:貧困を撲滅するタオバオ村の成功例と失敗例(11/2)

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  • vol.037:WeChatへの大転換を可能にしたテンセントと創業者のポニー・マー(9/14)
  • vol.036:デジタル界の無印良品になりたい。中国製造業を変えた小米(シャオミ)創業者「雷軍」(9/7)

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2020年5月配信分
  • vol.021 感染拡大で実戦投入された人工知能テクノロジーの数々(5/25)
  • vol.020 経済復活の鍵は「ライブEC」。感染拡大から広がる新たな販売手法(5/18)
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  • vol.015 中高年にスマホ決済を浸透させた台湾庶民派スーパー「PX Mart」の取り組み(4/13)
  • vol.014 1日で4.1兆円売り上げる「独身の日」は、どのように生まれたのか?(4/6)

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2020年3月配信分
  • vol.013 1日で420億円の商品を売る。網紅の桁外れの販売力の仕組み(3/30)
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image by:IHOR SULYATYTSKYY / Shutterstock.com
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知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』(2021年7月12日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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