東京新聞すら川内原発に触れず
さて次に4月23日、東京新聞朝刊第2面を見てみよう。
『「誘発型」被害拡大』と題されたこの記事は、布田川断層帯や日奈久断層帯の連鎖反応と識者の見解、今後の予測について細密に記述された秀逸なものであるが、決定的に欠けている点がある。それが先に指摘した川内原発の存在なのである。
端的に言えば、川内原発は究極の危機に晒されている。それは広瀬隆氏が指摘したような地震による原発災害である。これまで目にした中央構造線の状態、九州における活断層の状態から確信できるのは、明らかに九州の活断層と中央構造線は連動しているだろうということである。これは我々の想像力を駆使するまでもなく明白な事実のように思われる。
しかしながら、先の東京新聞の記事においてすら、川内原発の危うさについては全く触れられていないのだ。「反原発」を社是としている東京新聞ですらこの有様なのである。今回の一連の地震は明らかに中央構造線との連動が否定できず、その末端に位置するのがよりによって「原発」であるという事実に耳をふさいでいるかのようなのである。
これは一体どうしたことか。本来はこうすべきであろう。
NHKが報じなかった熊本地震と3.11「メルトダウン」の禍根
例えば視点をNHKに転じてみても、このような地震と原発の危険性については全く報道していないかのようである。
実は、NHKは過去にも、原発報道についてあまりに大きな禍根を残している。それが下記に示す「メルトダウン」報道である。
※NHK 「今の原稿、使っちゃいけないんだって」 – YouTube
ここではNHKの男性アナウンサーが「福島第一原子力発電所一号機では、原子炉を冷やす水の高さが下がり、午前11時20分現在で核燃料棒を束ねた燃料集合体が水面の上、最大で90センチほど露出する危険な状態になったということです。このため消火用に貯めていた水など、およそ2万7000リットルを仮設のポンプなどを使って水の高さをあげるための作業を行っているということです」と明確に話している。
ところが、その後微妙な間合いがあり、
「ちょっとね、いまの原稿使っちゃいけないんだって」
とのスタッフの声が入る。そして、先のアナウンサーは何事もなかったように、最初とは違った文面を読み上げたのだ。
「改めて原発に関する情報です。福島県にある福島第一原子力発電所の一号機では、原子炉が入った格納容器の圧力が高まっているため、東京電力が容器内の空気を外部に放出するベントの作業を始めましたが、格納容器のすぐ近くにある弁を開く現場の放射線が強いことから、作業をいったん中断し、今後の対応を検討しています」
ジャーナリズムの危機
つまりは、あれほど反原発で売っている東京新聞が川内原発に触れない事実、NHKも被災者の困窮ばかり報道して本質的な危機である川内原発に触れない事実がある。
ジャーナリズムに寄与している人間がこのことに気がつかないはずがない。事は中学生でも気がつく問題だ。ということは、意図的に川内原発の問題を避けているとしか思えない。
しかも前掲の画像を見れば、川内原発の直下には断層が走っている。端的に言えば、中央構造線の最南端に川内原発は建っているのだ。
政治を知っている者なら予感しているはずだ。九州の原発をめぐる問題は技術的なものではなく、もはや政治的問題になっていることを。
テクニカルな側面からすれば、今回の熊本大震災は熊本を中心とする活断層の異常な活動であり、それは日本最大の活断層である中央構造線と何らかの形で連動しており、この余波は今後日本列島をなんらかの形で揺さぶるだろうことは、ほぼ間違いないのである。
極端な言い方をすれば、小松左京の『日本沈没』のようなことが起きることは、今や否定し難い現実のようにも思われる。だからこそ本来、技術的側面からすれば九州にある原発は全て停止されるはずのものだ。
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