大化け株は不人気業種から生まれる
しかしそれだけではこんなに株価が何倍も上昇するというのはこれだけ短期間でなかなか起きることでもありません。
年初3,000円くらいだったところが一気に2倍以上というというところになっています。
これだけ株価が上昇するためには業績が好調だというのはもちろんなんですが、それまでの期待値が低くないと逆にこれだけギャップを生むことは出来ません。
すでに好調だとわかっているところだと実はなかなかそんなに上がらなかったりします。
むしろ好調な決算を発表したところで材料出尽しとなって、下がってしまうということもあります。
ところが日本郵船に代表される海運業界の期待値というのはものすごい低かったのです。
これは経常利益の推移です。

日本郵船<9101> 業績(SBI証券提供)
点線のところがプラマイゼロ、つまりこれを下回ると赤字ということです。15年間でなんと4期が最終赤字を記録しています。つまり、もう利益を出せるかどうかは分からない会社だったのです。
企業の価値株価というのは基本的には利益によって左右されますから、利益を出すかどうかはわからないのだったら、そもそも価値があるのかどうか分からないという、それぐらいまで言えるような会社でした。
ところが一気にそれが5,000億円もの最終利益生むような会社になって大きく業績が上がることになりました。
こういうことがあると株価も大きく上がるというところになってきます。
この状況から得られる示唆としては大化け株は不人気業種から生まれるというところにあります。
ピーター・リンチの投資哲学
これを言ったのが個人投資家にも人気のあるピーター・リンチという人です。
この人は世界最高のファンドマネージャーとも言われていて、10倍株をいくつもファンドに組み入れて、そして年率30%近い運用を13年間も続けたというとんでもない人物です。
この人は大化け株をいっぱい捕まえているのですが、10倍株になったような物の大半は不人気業種から生まれたという風に言っています。
つまり今説明したように事前の期待値が低ければ低いほど、上昇した時の上昇率というのは半端ないことになるという風に言っています。
ただ気をつけなければいけないのは、ただ単に不人気な業種を選べば良いというわけではなくて、不人気ながらも業績が上昇するという裏付けがないといけません。
実はこの日本郵船という会社に限らず、日本の海運会社というのはものすごく利益をで出せない状況に喘いでいました。
そんな中でこの日本郵船と商船三井、そして川崎汽船の3者が『one』という共同会社を立ち上げて、そこでコンテナ船事業を行っていくことにしたのです。
これは価格競争の激しい海運業界において少しでも競争力を高めるために行なったことです。
供給側がまとまることによって価格交渉力を付けることが出来ます。
そしてこのコロナ禍で供給が世界的に一気に減ってしまって、一方で需要が増えているという状況の中で価格決定力を持つということは価格を引き上げて利益を出しやすい環境というのが出来てきました。
もっともそれだけでは決して十分ではなく、コロナ禍があったからこそということになりますし、またその背景となる船賃の上昇というところをしっかりと確認して、初めてここに投資出来たという風に思います。
船賃の確認というとちゃんと統計も出ていますから、これを見ていると確かに上がっていますし、例えばこの2021年4月から5月にかけてものすごく上がっています。
5月の数値が発表されるのが6月の末ということになると思われるのですが、6月の末に買ったとしても、それなりの利益はあげることが出来たのではないかと思います。
このように不人気業種であっても、もしかしたらそこに可能性があるのではないかということで、何か良い銘柄やいい銘柄や良い状況を探してみるというのはこのピーター・リンチが教えてくれる大切なことということになります。
私としても以前、これはもうなかなか上がりにくいのではないかというようなことも言ったのですが、それは大いに反省しなければなりません。
こうやって背景となる数値をしっかりと見るべきでした。
今後もそういった偏りのない視野で素晴らしい上昇銘柄というのを探していければと思います。
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