タリバンのアフガン制圧で私がぼんやりと思ったのは、「コカ・コーラはどうなるのだろう?」という疑問だった。アメリカ人にとって、コカ・コーラが買えない国は抑圧された国という定義なのだ。逆に言えば、コカ・コーラが買えるようになって、はじめて文明国になるという定義だろうか。タリバン政権は「アメリカの象徴だ」としてコカ・コーラを排除してしまうのか。それとも飲まれ続けるようになるのだろうか。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)
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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フルインベスト」を運営している。
アフガニスタンのコカ・コーラはどうなるのだろう?
アフガニスタンからアメリカ兵が撤退していき、タリバンが今後のアフガンを支配する流れが決定的になった。
撤退していくアメリカ軍のニュースを見つめながら、私がぼんやりと思ったのは、「コカ・コーラはどうなるのだろう?」という疑問だった。
アメリカは2004年に傀儡政権であるハーミド・カルザイ政権を樹立して、アフガンの支配に乗り出した。その過程でコカ・コーラ社もドバイに住んでいるアフガニスタン人の事業家と組んで、首都カブールに進出して工場を設立した。2006年頃だ。
以後、アフガニスタンでも、コカ・コーラは一部の人に飲まれていたようだ。この当時、まさか17年後に再びタリバンが首都を奪還するとは夢にも思わなかったに違いない。その「まさか」が悪夢となって現実化した。
タリバンはコカ・コーラをどうするのだろう。「アメリカの象徴だ」として排除してしまうのか。それとも、タリバンもコカ・コーラが気に入って、アフガニスタンでも飲まれ続けるようになるのか……。
今後アフガニスタンがどのようになるのか分からない。もしタリバンがコカ・コーラを排除しても、私は再びアフガニスタンでもコカ・コーラが普通に飲まれる時代がやってくるのだと思う。どんなに長い時間がかかっても、そうなるはずだ。
コカ・コーラは「パックス・アメリカーナ」の象徴である。そういう意味で、コカ・コーラがアフガニスタンでどのような運命を辿るのか関心を持って見つめている。
コカ・コーラには「国境」がない
私は、そこらの途上国の脆弱な国家よりも、コカ・コーラ社の方が強大な組織体であると思っている。コカ・コーラには「国境」がないのだ。
1990年代、私はニカラグアやホンジュラスをさまよい歩いたことがある。
これらの国はみずみずしいオレンジが採れて、街のあちこちに絞りたてのオレンジジュースを飲ませてくれる店があった。
私が街の老人たちと一緒に絞りたての信じられないほど旨いオレンジジュースを飲んでいたとき、そのすぐわきで現地の10代の少年たちはビン入りの飲料水を飲んでいた。
スラムに住む10代の少年たちが飲んでいたのは何だったのか。それは、毒々しいアメリカの飲料水「コカ・コーラ」だった。
「コカ・コーラはこんなところにまで進出しているのか……」
コカ・コーラを飲む少年たちを見ながら、そう思わずにいられなかった。東南アジアでもコカ・コーラは当たり前にあったし、誰もがそれを飲んでいた。
コカ・コーラに国境はなかったのだ。