中国によるインターネット規制に対して、世界中が警戒しています。しかし、当の国民たちの間では意外にも歓迎されている様子。また、ゲーム規制をすり抜けるしたたかな小学生もいるなど、世界で報道されているほどの緊迫感はないようです。本記事では、中国の子どもたちの今どきのネット事情をお伝えします。(『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』牧野武文)
※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2021年9月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。
インターネット規制は「中国版ゆとり教育」のため
今回は、中国の子どもたちのネット事情をご紹介します。
中国では、毎年9月から新学年が始まります。その9月に合わせて、政府はさまざまな改革を行ってきました。
日本でも大きく報道されたのがオンラインゲーム規制です。18歳未満の未成年は、オンラインゲームは平日は禁止、週末は午後8時から午後9時までの1時間だけしかできないという厳しい内容です。
また、もうひとつ大きく報道されたのが、学習塾の禁止です。学習塾というよりも、オンライン教育サービスの禁止が主な狙いです。学校から大量の宿題が課され、それをこなすことが子どもたちにとって大きな負担になっていました。そこで、宿題の解き方を教えるオンライン家庭教師、オンライン補習のサービスが、特にコロナ禍以降広がっていきました。
しかし、みなさんご存知のように、過剰な数の企業が参入し、競争が激化し、割引クーポンを乱発する焼銭大戦の状況になっていました。
その中で、宿題の答えをAIが教えてしまう拍照捜題機能(プリントをカメラで撮影すると、答えが表示される)など、学習効果の妨げとなる機能も広まり、保護者や学校では以前から問題視をされていました。
政府は、学校が出す宿題を制限させ、同時に子どもたちの時間を奪う学習塾、オンライン教育サービスを事実上禁止する措置にでました。オンライン教育サービス各社は、大量に出していたテレビ広告、ネット広告を一斉に取りやめ、沈黙をしています。
補習系サービスは禁止となりましたが、プログラミング、ピアノ、絵画、スポーツといった情操教育系のサービスは対象外です。オンライン教育サービスの多くが、このような方向にシフトすると見られています。
つまり、今回の改革は、ある意味で中国版「ゆとり教育」でもあるのです。
その中で、当の子どもたちは振り回されてしまっています。ゲームができなくなった子どもたちが号泣をする動画がSNSに次々と上げられています。
しかし、ただ泣いているだけではありません。けっこう、子どもたちは中国という国をしたたかに生き抜いています。
今回は、今どきの子どもたちのネット事情についてご紹介します。