制限を華麗にすり抜ける子どもたち
また、制限を潜り抜ける方法がすでにいくつもネットに出回っています。
テンセントの場合、ネットゲームのアカウントをつくるのに、身分証の登録と顔認証が要求されるようになっています。これにより、未成年を見分けるわけです。
頭のいい子どもは同居の祖父などにアカウントをつくってもらい、ゲームをするときは祖父のところに行き、顔認証をしてもらうという方法を使っているようです。父親と母親はさすがにそういう協力はしてくれないので、祖父か祖母に甘えるのだと思います。
また、パブリックVPN(Virtual Private Network)を使って、海外からのアクセスだと偽装をすれば、海外ユーザーには年齢による制限はないので、好きなだけ遊べるようになります。
テンセントはこのような回避法も把握をしていて、今後、アカウントの凍結などをしていく予定ですが、しばらくの間はいたちごっこが続きそうです。
ゲーム業界は大打撃
この制限により、ゲーム市場は大きな影響を受けざるを得ません。
「2021スマホゲームユーザー洞察報告」(QuestMobile)によると、スマホゲームのユーザーのうち未成年(18歳以下)は15.7%で、課金ユーザーのうちの未成年も13.2%います。週末しかできないというのであれば、ゲーム以外の楽しみを見つける未成年もいるでしょうし、ましてや課金をする未成年はほとんどいなくなる可能性があります。
未成年の課金は額が小さめであることを考慮しても、ゲームの収益の1割前後は落ち込むことになります。未成年といっても、ゲーム市場にとっては重要な顧客だったのです。
未成年のインターネット普及率は95%
実際、中国では小学生ぐらいでもスマホを持っている子どもは珍しくありません。下校時間になると、学校の帰りに子どもたちが街角に集まって、王者栄耀に興じている光景はよく見かけます。
「2020年全国未成年インターネット使用状況研究報告」(中国インターネット情報センターCNNIC)によると、未成年人口(6歳から18歳)は1.83億人で、インターネット普及率は94.9%に達しています。小学1年生から高校3年生までの95%がネットにアクセスできる状況にあるのです。しかも、自分専用のアクセスデバイスを持っている未成年の割合は82.9%もあります。
実際、中国の今の子どもたちは物心つく前にスマホに触れています。親がスマホを買い替えて不要になったスマホをおもちゃ代わりに与えるからです。SIMカードは抜いてしまうため、Wi-Fi経由でしか利用できませんが、ゲームをしたり、動画を見たりするにはじゅうぶんです。
そして、小学生の間に、SIMカードの契約をしてスマホとして利用するようになります。スマホはゲームだけでなく、学習ツールとしても使われるため、小学生のうちから使うのが一般的になっています。
では、小学生にスマホをもたせて、どのように使われているのでしょうか。ここからは、今どきの子どもたちのインターネットの世界をご紹介します。
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