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中国“規制地獄”を生きる子ども達の最新ネット事情。ゲーム制限・教育改革を余裕で受け流すスマホネイティブの底力=牧野武文

小中学校のネット対応は100%

スマホが普及したもうひとつの理由が、学校のインターネット対応が早かったことです。

「デジタル中国発展報告」(国家インターネット情報弁公室)によると、ネット対応をしている小中学校の割合は2020年に100%に達しました。ディスプレイやタブレットを備えたマルチメディア専用教室の配備率も98.35%に達しています。これは農村の分校のような学校も含めての統計です。

先進国と違って、中国の小中学校の教材や教具の配備は遅れていました。そこにインターネットが登場したため、手軽に導入できる教材教具としてPCやタブレットが活用されるようになっていきました。特に2020年は、新型コロナの感染で学校を閉鎖して、オンライン授業に切り替えたところも多く、ネット対応率は100%を達成することになりました。

未成年がネットアクセスに使うデバイスは、圧倒的にスマートフォンが多くなっています。ただし、2019年の93.9%と比べると2020年は92.2%と微減をしています。オンライン授業を受けるのには、スマホの小さな画面はやりづらいのだと思います。プリントなどが表示された時に、いちいち拡大をしなければならないこともあります。そのため、2020年はタブレットを利用する未成年が28.9%から39.6%へと増えました(スマートウォッチについては2019年は統計が取られていません)。

都市部の学校では、アリババのリモートワークツール「釘釘」(ディンディン)などを導入して、宿題プリントの配布から提出までをオンライン化しているところも少なくありません。釘釘には、オンラインでアンケートを送り、その結果を自動集計する機能などもあるため、コロナ禍で学校が休校した時に、生徒の健康状態を把握するツールとして導入されて以来、教育現場でも使われるようになっています。

子どもたちはインターネットで何をする?

このようなデバイスをどのようなことに使っているのかのアンケート結果で1位にきたのはオンライン学習です。学校の宿題も、国語や算数などの基礎科目はプリント中心ですが、理科や社会といった科目ではネットで調べて回答する、まとめるという課題が多く、もはやネットがなければ宿題をこなすこともできません。

小学生の場合、自分のスマホを持っている割合は6割程度ですが、家庭で共用のPCやタブレットを用意したり、親が2台目のスマホを契約し、子どもに使わせているようです。また、貧困地区では、NPOなどが、ネットアクセスできるノートPCやタブレットを無償貸与する活動をしています。

未成年のネット普及率は98.7%ですが、このような補助手段まで入れると、学習をする際にはほぼすべての子どもたちがネットアクセスできる環境が整っています。これもコロナ禍で進んだ数少ないよかったことのひとつです。

第2位は音楽で、ゲームよりも多くなっています。宿題をやりながら音楽を流すことまで禁じる親はいませんが、ゲームをしているとさすがに叱られるということがあるのだと思います。

1日のゲーム時間を聞くと、平日は1時間以内が71.1%になり、週末でも55.1%になります。
意外に多くありません。多くの家庭では、ゲームやショートムービーといった娯楽系のインターネットを使う時間を制限しているからです。アンケートによると、一切禁止しているという家庭も11.9%あります。

この制限をするために、子どもに自分のスマホやタブレットを持たせずに、家族共用にあえてしている家庭もあります。遊びに使うときには、タイマーをセットしておいて時間がきたら取り上げるというやり方です。

親がテック企業などに勤めていて、デジタルリテラシーが高い場合は、ペアレンタルコントロール(保護者管理の仕組み)を入れて、未知の人とのコミュニケーションや特定のアプリを使えないように制限したり、時間制限をかけているという例もよく耳にします。

デジタルデバイスは学習に必要だから使わせる。しかし、厳しく管理をするというのが中国の平均的な家庭のようです。

とは言え、ゲームは子どもたちにとって魅力的です。週末には3時間以上ゲームに興じるという子どもが12.4%もいます。これがオンラインゲームに限っては、強制的に平日は0、週末でも1時間になってしまうわけです。

Next: ゲームを取り上げられた子どもたちの興味はショートムービへ

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