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風評被害“完全払拭”の契機に?米国が福島産食材の輸入停止措置を撤廃。菅政権の評価がまたもや爆上がりも背景には「米中貿易戦争」との見方も

アメリカが長らく続けてきた日本産食品の輸入停止措置が、今月22日付(米国時間21日付)で撤廃されたと発表され、日本国内からは喜びの声があがっている。

報道によると、この輸入停止措置は2011年に発生した福島原発事故を受けて始まったもの。アメリカはこれまで、福島県産のコメや原木シイタケなど14県ののべ100品目の輸入を停止していたが、今回の撤廃で全ての輸入が再開される。

また別の報道では、今回の輸入規制の撤廃に関して農水省は、今年4月に行われた日米首脳会談で菅義偉首相がバイデン米大統領に働きかけたことなどが功を奏したと説明しているとのこと。政府は今後も、いまだ輸入停止措置を続ける国や地域に対して、撤廃に向けての働きかけを続けるという。

EUでも一部産物の輸入規制解除との報道が

福島原発事故の発生がきっかけで始まった、諸外国による日本産食品の輸入停止措置だが、その影響を最も受けているのは、やはり福島県産の農水産物。

同県農産物流通課の調べによると、今回のアメリカの規制撤廃後も中国・香港・台湾・マカオ・韓国といった国や地域が、福島県産食品の広い品目、あるいは一部の輸入を停止中。さらに、EU・英国・ロシアなど9か所の国や地域では、検査証明書の添付等により食品輸入を認めるといった制限があるという。

食品に含まれる放射性物質の検査に関して、日本はその基準値を国際的なルールと比べて相当厳しく設定し、それを超えれば出荷の制限といった措置を取るなどしている。にもかかわらず、依然として日本産食品の輸入停止が撤廃されない国や地域が存在するのは、やはり根強い「風評被害」の影響が大きい模様ようだ。

現に2019年には韓国の水産物禁輸を巡り、日本は世界貿易機関(WTO)に「科学的根拠がなく不当だ」として訴え出た際も、最終的には日本の訴えが退けられる結果となっている。

また最近では、東京五輪のために来日していた韓国選手団が、福島産の食材を徹底的に避けるために、自前で弁当を作って選手に提供するという行動に出て、日本国内で「福島へのヘイト行為」だと、顰蹙の声が多くあがったばかりだ。

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ただ、ここに来て長らく続いてきた輸入規制も徐々に緩和される流れが来ているようで、今回伝えられたアメリカ以外に欧州連合(EU)においても、栽培キノコ類と生食用の柿に対して実施されていた輸入規制を、今年10月に全廃するとの報道が。同様の措置は、EU以外で同規則を採用していたアイスランドやノルウェーなど4か国でも実施されるようだ。

背後には中国の「TPP加入表明」が?

今回突如報じられたアメリカの輸入規制解除に関して、風評被害に耐えた福島などの農業・漁業関係者をねぎらう声もあがるいっぽうで、これによって大いに株を上げる格好となっているのが、バイデン米大統領との首脳会談で規制撤廃を働きかけていたとされる菅首相。

先日の退陣表明以降、降板を惜しむ声が一部からあがっていたが、今回の件でも実はきちんと成果を上げていたのだと、その手腕を改めて評価する声が多くみられる状況だ。

そのいっぽうで、アメリがこのタイミングで輸入停止措置を撤廃したのには、中国が先日TPPへの参加を表明したことが大いに影響しているのでは……そんな観測も一部からは浮上している。

トランプ前政権時代にTPPから離脱し、バイデン政権になっても早期の復帰に慎重な姿勢だったアメリカに対し、中国としてはTPPへの加入によって、アジア太平洋地域での影響力を高めたいと考えているのは明らか。アメリカはそういった状況を防ぐために、TPP再加入の準備を進めており、その際に“科学的でない輸入規制”だということで、再加入のネックとなる可能性のある日本への輸入停止措置をクリアしたのではないか。また、それとともに日本だけでなく、台湾に対しても嫌がらせのような輸入規制を行っている中国を牽制したいといった狙いがあるのでは……といった見方である。

突然の輸入規制解除の裏には何があったのか、その政治的背景は今後大いに取沙汰されていきそうだが、とはいえ福島県を含めた日本全国の農水産物生産者にとっては、まさに朗報となった今回の件。ただ、たとえ輸入が解禁されたとしても、それだけで以前のように日本の農水産物が売れていくかというと、それはまた別の話。消費者レベルでの風評被害の完全払拭なども含めて、解禁後のこれからが正念場だといえそうだ。

Next: 「不買はしても日本の農産物の種はパクる韓国」

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