悪性のインフレのために国民は貧乏になっている
しかし、やはりバイデンの支持率低下の大きな背景になっているのは、経済問題である。
特にインフレの亢進(こうしん)を心配する米国民は多い。「FOXニュース」の別の調査によれば、53%のアメリカ人はインフレを大変に懸念している。他にもさまざまな問題があるが、どの問題も懸念は50%に達するものはない。
アメリカのインフレ率は、10月は前年同月比で5.4%となり、11月はこれを上回る6.2%の上昇になった。31年ぶりの高い上昇率だ。
戦後のアメリカは何度か悪性のインフレに見舞われている。オイルショック、ベトナム戦争の敗退、イラン革命などがあいついだ1970年代後半から80年代の始めにはインフレと高失業率が同時発生するスタグフレーションが起こり、米経済は厳しい状況に追い込まれた。
1981年にはインフレ率は13.5%にまで達した。
この41年前の状況から見ると、現在のインフレはたいしたことはないと思うかもしれない。だが多くのアメリカ人はこれを生活実感として相当に厳しくとらえている。
それというのも、物価の上昇が所得の増加を上回ったため、個人の可処分所得が年率0.7%で減少しているからだ。
また、米労働省が発表している物価と平均賃金の関係を見ると、名目上の昇給率が平均約4%であるにもかかわらず、アメリカの労働者の実質収入は過去1年間で約2%減少している。
他方、貨物量は2019年と変わらないにもかかわらず、輸送コストは50%上昇した。さらに、9月の住宅価格は年率20%で上昇を続けている。また、エネルギーおよび食料品の価格も引き続き上昇している。
これらのデータを総合すると、国民の所得の伸びよりも物価の上昇速度が早く、国民は可処分所得の目減りを強く感じるようになったということだ。これは深刻な状況である。
バイデン政権は約200兆円にも上る巨額の経済政策を実施し、手厚い失業給付や生活支援金などの支給で国民生活を支えたが、政府が投入した経済刺激策の効果をすべてインフレが吸収していることが分かる。
そして、すべての物価指標は、この状況がさらに悪化していることを示唆している。
要するに国民は、政府の支援にもかかわらず、インフレの亢進から可処分所得が下がり、貧乏になっているということだ。この傾向は中産階層以下の所得層に特に顕著だ。