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バイデン政権「ワクチン義務化」で解雇者続出、警察も消防士も人手不足へ。悪性インフレが襲う米国の現状=高島康司

中古車価格の急上昇

しかし、このように書いても、アメリカのインフレの激しさを実感することは、慢性的なデフレ状態にある日本では難しいかもしれない。

むしろ、インフレの亢進が激しいいくつかの製品に注目すると、実感しやすいだろう。ここでは中古車に注目したい。中古車の価格上昇がとても激しくなっているのだ。

世界的なコンピューターチップ不足の影響で、新車の生産台数が大幅に減少している。そのため、需要の多くが中古車市場にシフトしているのだ。

この1年間、中古車価格は過去に例を見ないほどの勢いで上昇している。9月に比べ10月は9.2%も上昇した。これは前年同月比では38%の上昇である。2年前の2019年10月と比べると、なんと59%の上昇だ。

毎月上昇率は拡大しており、今後もこの傾向は続くものと思われる。

こうした状況なので、過去2~3年以内に新車を購入した人は、いまでは新車のときよりも価値が上がっている。アメリカでは通常10月は、中古車価格が下がる。今年の10月は、1997年から始まった中古車価格の指標、「マンハイム・インデックスデータ」の歴史で、季節調整なしで価格が上昇した初めての10月となった。

SNSなどでアメリカ人の声を拾うと、2020年から38%、そしてコロナ前の2019年から59%の中古車価格の上昇という現実は、一種の恐怖をもたらしているようだ。中古車は必ずしも生活必需品ではない。しかし、このようなインフレは食料などの生活必需品にも波及するのではないかという恐怖だ。

食料とエネルギー価格の上昇

そして食料だが、予想を越えるインフレはすでに始まっている。

例えば、一部の肉の価格は対前年比で約40%も上昇しているものもある。調査会社の「IRI社」によると、リブアイと呼ばれる牛のロース肉などの価格は、1年前に比べて約40%上昇した。

これを受けてスーパーマーケットでは、買い物客は牛肉の購入を控え、代わりに鶏肉や豚肉などのより安価な肉に乗り換えている。

「ツイッター」や「テレグラム」などのSNSでは、食品の価格が高騰し続けると、いずれは大企業が配送の乗っ取りから守るために、食品トラックに武装した警備員を乗せるような事態になるのではないかと恐怖する投稿が頻繁に見られる。

また、エネルギー価格の高騰も深刻だ。特に今年の冬は、アメリカの多くの地域で非常に寒い冬になると予測されており、暖房費はこれまで以上に高くなると予想されている。

新型コロナウイルスのパンデミック時に世界経済が減速したことで急落したエネルギー価格は、いま逆に急上昇している。アメリカの家庭の約半分は暖房に天然ガスを使っているが、昨年のこの時期に比べて価格は約2倍に高騰している。10%の家庭は冬季に暖房用オイルやプロパンガスを使っているが、1バーレル、90ドルに迫る原油価格の高騰の影響は大きい。

10月、「米国エネルギー情報局(EIA)」が発表したレポートによると、「予想される燃料費の高騰に加え、寒い冬によるエネルギー消費の増加」により、暖房用オイルのコストが昨年に比べて約43%上昇すると警告している。また、プロパンガスは54%、天然ガスは30%、電力は6%の上昇が見込まれている。

このような状況に対して、「Foxニュース」のインタビューに答えたあるアナリストは、事態が悪化すれば、アメリカ人が「家の中で凍える」という事態が実際に起こりうると警告している。

Next: インフレ加速の原因のひとつは労働力不足

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