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バイデン政権「ワクチン義務化」で解雇者続出、警察も消防士も人手不足へ。悪性インフレが襲う米国の現状=高島康司

労働者不足とインフレ

さらに、インフレを加速させている要因のひとつになっているのが、減少のペースが遅い完全失業者数である。

以下は、コロナ前の2020年1月と比べた完全失業者数の変化である。

  2020年1月  2021年9月
・日本:164万人 189万人
・米国:580万人 767万人
・英国:136万人 151万人
・韓国:112万人 85万人

完全失業者数は、ロックダウンなどでパンデミックの経済的影響がピークに達した2020年4月に急上昇したが、社会活動の規制が緩和されるにしたがって各国の完全失業者数も減少した。もちろん人口の大きさもあるが、やはり上のデータを見るとアメリカの完全失業者数の減少のペースは相当ににぶい。コロナ前の2020年1月と比べると、約200万人多い人々が失業している。仕事に戻っていないのだ。

仕事に戻らない選択をした人々がどのように生活をしているのかは、第662回の記事に詳しく書いた。以下が多かった。

1)退職金と年金
2)預金、株や暗号通貨の投資
3)家庭菜園と農業などを組み合わせて生活

【関連】米国で失業給付が終わっても「働かない人」続出の異常事態。労働力不足とサプライチェーンの寸断が世界恐慌の引き金に=高島康司

いま企業は、人々の雇用を促進するためにあらゆる努力をしているようだ。賃金を大幅に引き上げ、多額の契約ボーナスを支給し、大学への進学費用を提供し、場合によっては薬物検査を完全に免除するところもある。

しかし、このようなことが起きているにもかかわらず、767万人の人々が仕事に戻る気配ない。

もちろん、このような労働者不足は賃金を上昇させており、賃金の上昇分を製品価格に転嫁する企業も多いことから、インフレをさらに亢進させる要因にもなっている。

ワクチン接種の義務化

しかし、この状況をさらに悪化させる可能性があるのが、バイデン政権によるワクチン接種の義務化である。バイデン政権は従業員100人以上の企業に新型コロナウイルスのワクチン接種を義務付ける方針を打ち出した。今後、従業員数100人未満の企業にも追加の義務を課すことを検討している。

義務化の方針はルイジアナ州の裁判所で差し止められ、またテキサス州やユタ州でも同じような提訴がなされているが、バイデン政権は強気である。ワクチン接種の義務化を撤回する動きはまったくない。

しかし、義務化への抵抗はあまりに強い。短期的には、全米で実施されているさまざまな義務化によって、かなりの数のアメリカ人が職を失う可能性がある。

史上最悪の労働力不足のなかで、このようなことが起こるのである。その影響力は大きい。インフレをさらに促進する要因にもなりかねない。

すでに抵抗の兆候は出ている。空軍は40人の軍人を退役させ、11月1日の期限までにワクチン接種を受けられなかった数千人もの軍人に対応する準備をしている。これは、アメリカの自衛能力が損なわれるのではないかと懸念されている。

また、カンザス州ウィチタ市では、航空機メーカーの「テクストロン社」と「スピリット・エアロシステムズ社」で働く約1万人の従業員のうち、半数近くがワクチン接種を受けておらず、連邦政府の義務に反して雇用を危険にさらしていると組合の幹部は語る。

「この件で多くの従業員を失うことになるだろう」と地元の機械工組合地区の責任者であるコーネル・アダムスは語った。多くの労働者は、ワクチンに反対しているわけではないが、個人の健康上の決定に政府が介入することには断固として反対しているという。

Next: 警察も消防士も刑務官も…ワクチン拒否による労働者不足が止まらない

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