株式市場の「下押し主体」GPIFが個人投資家の敵にまわる日
忘れてならないことは、投資理論上、リスク資産投資によって期待収益を得られる確率は、同額の損失を被る確率と同じだということだ。
「リスクを取れば高いリターンが得られる可能性が高まる」ことは声高に叫ばれているが、「高い損失を被る確率も同じだけ存在する」ことはほとんど語られることはない。
さらに、GPIFが「世界最大の運用資産を持つ機関投資家」であるということは、GPIFは「評価益を実現益に変えることが世界一難しい機関投資家」だということでもある。
例えGPIFが「世界最大の機関投資家」だとしても、年金給付のためにその資産を取り崩さざるを得ない「資金流出主体」である限り、GPIFが「株式市場を買い支える主体」にはなり得ない。むしろ、株式市場にとって「下押し主体」である。
この辺りは「投資戦略フェアEXPO2016:セミナー『“Bye-bye-Abenomics”でどうなる?株式相場』」でも話しをしているので興味のある方はご覧頂きたい。
進むも地獄、戻るも地獄
黒田日銀が追加緩和を見送ったことをきっかけに金融市場が混乱を見せたことから明らかなように、限界がある政策は、推し進めようとしても、引き返そうとしても市場に失望を与える運命にあることになる。
「マイナス金利付量的・質的金融緩和」に限界が見えてきているのと同時に、「GPIFによる株価下支え」も限界に達してきている。
ここに来て世界の金融市場がリスクオンとなっても取り残され、リスクオフになったら道連れにされるのは、日本固有の政策が「進むも地獄、戻るも地獄」という状況に達したからだ。
「異次元の金融緩和」「GPIFによる株価下支え」という誤った政策を続けて来たツケを、これから払わなければならない局面を迎えている。覚悟しなければならないのは、「代案はない」ということだ。
『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2016年5月3日号)より
※記事タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動してきた近藤駿介の、教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝えるマガジン。