fbpx

「獺祭」旭酒造、大卒初任給30万円への大幅引き上げは“賃上げの号砲”となるか?始まった若手不足と2022年問題

人気の日本酒である「獺祭」の蔵元・旭酒造が、2022年・2023年に同社製造部に入社する大卒新入社員の初任給を、従来の月額21万円程度から30万円に引き上げると発表したことが、SNS上で話題となっている。

報道によると、同社では「5年で平均基本給を2倍」という目標を掲げ、具体的には2026年度の製造部の給与を2021年度比で2倍以上にすることを目指しているという。そのため初任給にくわえ、既存社員の給与をともに、2026年まで段階的にベースアップしていくという。

旭酒造は今回の件に関して「獺祭の価値の中心を担う製造メンバーが誇りを持ち、美味しさを追求し続ける酒造りの環境を作りたいと考えている」と説明。その一環として、今回の給与の引き上げを決断したということだ。

SNS上からは「他の会社も続いて欲しい」との声

日本酒、ことに地酒と呼ばれる類のものといえば、日本酒の醸造工程を行う職人である杜氏を毎年雇い、その者たちの“経験”や“勘”が酒造りの首尾を左右するといった印象がある。

しかし獺祭の旭酒造では、大量投入した近代的な醸造機材を活用して、酒造りのプロセスをデータ化するという製造法を導入。杜氏の経験や勘に頼らない酒造りを実現させたことで、通年での安定生産ができるようになった。今回の取沙汰されている製造部といえば、そんな旭酒造の酒造りの根幹とも言える部署だ。

いっぽうで旭酒造といえば昨年5月に、飲食店への度重なる営業時間の制限や酒類提供の中止といった処置に対し、より合理的なものに見直すべきだという内容の“意見広告”を、全国紙に掲載。これが大きな反響を呼んだことも、記憶に新しいところである。

いわゆる“モノ言う蔵元”といったイメージもある旭酒造だが、今回の“初任給大幅引き上げ”も、またもや大きな反響を呼ぶことに。

このところは岸田首相が「新しい資本主義」を掲げ、4月からは賃上げ促進税制をスタートさせるなど、企業に対して“賃上げ”をしきりにせかしているところだが、実際にそういった流れになるかどうかに対しては、国民の間でも懐疑的な見方が多い。そんな最中での実に景気のいい話とあって、SNS上では「夢がある」「他の会社も続いて欲しい」「飲んで応援しよう」などと、旭酒造の方針を好意的に捉える声が圧倒的に多い状況だ。

新卒採用時の人材確保が今後困難に?

そのいっぽうで、今回の旭酒造による初任給大幅引き上げには、もうひとつの思惑があるとの指摘も。一部報道でも取沙汰されている「2022年問題」への対応だ。

というのも、大卒の年齢に相当する22歳の人口が、この2022年を境にぐっと減少するとのこと。そのため、新卒採用時の人材確保が今後困難を極めていくものとされているという。また採用した若手社員に関しても、昨今の人材流動化の流れもあって“釣った魚に餌はやらぬ”というわけにはいかなくなるというのだ。

旭酒造といえば、2021年9月期には獺祭の海外輸出金額が国内販売額を超えるなど、海外進出にも積極的な企業。それだけに人材流出に関しては、国内企業のみならず海外資本とのせめぎあいにもなりかねない。ということで、これほどの賃上げが必要との判断に至ったのでは……といった推測も浮上している。

このように思惑は様々ある模様である、今回の旭酒造による初任給大幅引き上げ。とはいえ、これが様々な業種にも波及して欲しいというのは、世のサラリーマンたちの多くが願うところだろう。

Next: 「20万円では貧しい若者は車も買えないし結婚もしない」

1 2
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー