三木谷氏が言う「爆速黒字化」は実現するか?
三木谷氏もインタビューで「爆速黒字化」と言っていて、2022年4月期が赤字のピークで、その後費用は減り利益が増え、2023年度には単月黒字化すると言っています。
楽天がモバイル事業に参入した時点で収支が厳しいことは分かっていたことで、他のネット事業で利益を出しているのだからそこまで黒字化を急ぐ必要はないのではないかという向きもありましたが、一方でお尻に火が付いている状況もあります。
2021年に第三者割当増資を行っています。
資本を入れたのが日本郵便と中国のテンセントです。
それから外貨建て永久劣後債(返済期限が無く普通の債権より後に返済する)を約3000億円発行しています。
第三者割当増資や劣後債を発行しなければならないということは、自己資本比率が下がっている、つまりお金が無いという状況なのです。
今までのネット系の事業はお金をかけないでやってこれましたが、物理的な基地局への投資を行わなければならず、急にお金が無くなってしまったという状況です。
これを解消するために、資金調達の多様化と言っていますが、外部資本を受け入れたり、楽天銀行や投資先をIPOさせようとしています。
ところが、楽天はS&Pから「BB+」という格付けをされてしまいました。
債券の評価としてBBB以上が推奨されるのですが、財務状況やキャッシュフローが芳しくなく、信用が低いと評価されたため、お金を借りたり債権を発行したりするのが難しくなりつつあります。
今後、モバイル事業はもちろんのこと、それ以外の事業にも影響を及ぼしかねない状況です。
「財務」か「顧客」か
この状況を脱却するためには楽天モバイルの黒字化を急がなければならないのは当然なのですが、それが楽天の将来にとって望ましいかというと疑問があります。
黒字化を急ぐことによる弊害もあるのです。
ローミングを終了するとその費用が無くなって収支は改善するのですが、その分つながりにくくなります。
人口カバー率96%といっても、どこでも96%つながるというわけではなく、楽天はプラチナバンドと呼ばれる帯域を持っていないので、建物の中や地下街なんかでは使いにくくなります。
KDDIのローミングが無くなると、メインの携帯として楽天を持つのは厳しいということになりかねません。
設備投資に関しても、コストをかけずに行おうとするあまり、設備が不十分でつながりにくかったりまったくつながらなくなる事故が起こったりして、顧客の不満がたまることも考えられます。
また、今いる会員への値上げも黒字化には手っ取り早いですが、そもそも安さでひきつけていた顧客が離れてしまう懸念があります。
楽天モバイルだけではなくグループ全体としてもお金が無いので、楽天ポイントの付与率を下げようという動きもあります。
こうして、楽天モバイルの黒字化を急ぐことによって楽天グループ全体の顧客離れが起こる可能性があるのです。
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