モバイル参入で”茨の道”へ
今後の大きな分かれ道として、2022年9月のプラチナバンドの再割り当てがあります。
今はドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社がプラチナバンドを持っていますが、総務省によって割り当てなおすということです。
ここで楽天がプラチナバンドを取ることができれば、つながりにくいという問題は解消すると思われますが、万が一取れなかった場合、つながりにくいままで加入者も増えてこないということになります。
株価を見てみますと、この5年間、株価はほぼ上がっていません。
モバイル参入前の2018年12月期の最高益に対するPERは約10倍と、ネット系の企業ではかなり割安な水準となっています。
一方でモバイル事業に参入したことで、赤字はもちろんですが価値破壊が起こり、ポイントを引き下げなければならないなど楽天経済圏に悪影響が及んでいる現状です。
このまま財務的に先が見えないということになると、すでに楽天銀行のIPOの準備をしているということですが、それ以外の例えば楽天証券や楽天トラベルの事業の売却など、解体のシナリオも見えてくる可能性もあります。
目下ではプラチナバンドの獲得を目指していますが、それは最低条件であり、つながるようになったからといってすべてが良くなるというわけではなく、料金以外のメリットを見出していかなければなかなか収支は改善していかないと思われます。
楽天はモバイル事業に参入したことで”いばらの道”まっしぐらという状況です。
逆に、売り上げ高は順調に伸びているので、モバイル事業にさえ参入していなければ株価はどんどん伸びていたのではないかと思えるほどです。
なぜモバイル事業に参入したのか?
では、なぜ楽天はモバイル事業に参入したのでしょうか。
利益が見込めるからというのが普通ですが、今の状況が楽天にとって有利とは思えません。
楽天の手法としてライバルより低価格で入ってシェアを取っていくというものがありますが、低価格で利益を出すためには規模を取ることが必要になります。
ほとんどの人がスマホを持っている状態でその回線を移行させるというのは相当な労力が要ります。
コストを下げてシェアを取ろうというのであれば、回線は他社から借りて契約は安くするというMVNOで良かったのではないかとも考えられます。
楽天シンフォニーの通信の仮想化の仕組みを外国の通信キャリアに売れば数千億円単位の売り上げが出ると期待されていて、それが楽天モバイルの黒字化のウルトラCになるのではないかとも思えますが、モバイル事業参入の時点でその戦略が見えていたようには思えず、後付け感は否めません。
モバイル事業自体ではそれほど利益は出せなくても、それ以外の事業に拡大できるのであれば参入する意義があります。
通信契約の顧客情報をマーケティングなどに使えるのではないかという見方もありますが、楽天会員は国内ですでに1億人を超えていて、大量の顧客情報を持っている状態です。
ここから拡大する余地は限定的であり、合理的な戦略とは言えません。
楽天経済圏のクロスセルということもあるのでしょうが、それには多額のコストのかかるモバイル事業でなくてもよかったのではないかと思われます。
少しビジネスからは離れた話になりますが、三木谷さんは菅元総理が官房長官時代に仲が良かったようです。楽天がモバイル事業に参入することで大手キャリアの通信料を下げさせようとしたのではないかという風に見えます。
ところが菅さんは総理大臣に就任すると早々に大手キャリアに通信料金を引き下げさせようとしました。それによってアハモなどが誕生し、当時攻勢をかけていた楽天モバイルにとっては厳しくなってしまいました。
梯子を外されたということです。
そもそも楽天が通信の免許を取れたのは菅さんの後押しがあってのことだと思いますが、今となっては梨の礫となっています。
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