昇進を断った社員に対して懲戒処分を検討する……そんなとんでもないことを考えている経営者が、ここ最近増えているといった内容のツイートが、ネット上で大きな反響を呼んでいるようだ。
最近、昇進・昇格を断ったことを理由に懲戒処分ができないかという相談が増えてきました。店長や課長への昇進・昇格を断る人が増えているそうです。あまり議論されていない論点です。広い意味での労働条件の変更でしょうし、昇進・昇格による不利益(責任・残業代の扱い)もそれなりにありそうです。
— 向井蘭 (@r_mukai) February 23, 2022
労働問題をよく扱う弁護士であるツイート主によると、使用者側から「昇進・昇格を断ったことを理由に懲戒処分ができないか」といった相談が、このところ増えているといい、主に店長や課長への昇進・昇格を断る人が増えているとのこと。
ちなみに、これに対してツイート主は「昇進・昇格を拒否すること(積極的な不同意)は可能で、これを理由とする懲戒処分は難しいと思います」と見解を述べている。
昇進・昇格を拒否すること(積極的な不同意)は可能で、これを理由とする懲戒処分は難しいと思います。
懲戒処分をするよりも「店長になりたい」「課長に昇格できて嬉しい」と思ってもらえる制度にしないといけないでしょうね。 https://t.co/Oj7UQ6zIC3— 向井蘭 (@r_mukai) February 23, 2022
“人件費抑制”の手段としての昇進か
昇進拒否を理由に懲戒処分を検討するという、俄かには考えられないような今回の話。ただ、他の社労士を務める方からも「私も最近相談を受けました」というツイートがあるなど、決して限られた場所などのみで起こっている事象ではないようだ。
コメント失礼します。私も最近相談を受けました。そもそも能力があるから昇進させたいのに、懲戒をして、本人のモチベーションを下げるだけの結果を招きそうで対応に苦慮しました。
— すんたろ (@shuntarou08221) February 23, 2022
“サラリーマンといえば出世こそ第一”といった価値観は今や昔。最近は若い世代を中心に“マネジャーよりもプレイヤー”、あるいはスペシャリストを志向するといった意識を持つ者が多くなっていて、そのためにいわゆる出世を望まないといった向きは、相当増えているようである。
いっぽうで、そういった前向きな理由とはまた別に、サラリーマンの間で広がっているのが“出世したところで責任が増えるだけで給料が減るんだから割に合わない”といった意見。確かに下手に出世して管理職になってしまうと、それまで貰えていた残業代がつかなくなり、結果として収入が減ってしまうというというのは、よく聞く話である。
さらに今回の件であがっているのが、これは“みなし管理職”“名ばかり管理職”ではないかという声だ。
かれこれ10年以上前には、日本マクドナルドの直営店店長が職務上の権限がほとんど無いうえに、時に月100時間以上の残業を強いられていたにも関わらず、管理監督者とされて残業代が支払われなかったことに対して、東京地裁が同社に約755万円の支払いを命じるという判決があったが、今でもいわゆる“人件費抑制”の手段として、社員を昇進させようとする会社は少なからず存在するというのだ。
ただ、こういった“手口”も今では広く周知されているのが正直なところで、そのことも昇進を拒否する者のさらなる増加に繋がっているのは言うまでもないだろう。
SNS上からは「無能の極み」などと批判の声が
今回のツイートに対してSNS上では「まじクソですね」「無能の極み」「もう潰れるしかないんじゃあないですか」などと、昇進拒否に懲戒処分を検討するような会社に対しての痛烈な批判が殺到。
管理職昇進断ったからって、懲戒処分で辞めさせようとか、まじ○ソですね。責任増えるし、無駄に会議ばっかだし、残業つけれないし…お賃金ガッツリ増えない限り、誰もやらないんですわ。
— ZEN (P) (@ZEN45548809) February 23, 2022
そもそも昇進させたい程度に有能な人間を
昇進蹴ったからって懲戒処分したがるような会社とか
自分で人材を魚の餌にして蒔いてるようなもんだし無能の極みでしょ— ツイ (@tui_sidou) February 24, 2022
能力あると昇進させられ、給料は減るわ責任は重くなるわ死ぬほど働かされるような環境にさせられるわ、言うこと聞かなきゃ懲戒処分にみたいな罰ゲームしかない会社、もう潰れるしかないんじゃあないですか。 https://t.co/Ntr8DaRrBx
— さかなちゃん☆ウクレレ歌人←β崩壊 (@sakana20001) February 23, 2022
そもそも、どこの会社のことなのかも分からない話にもかかわらず、こうしてまるで我が身のような勢いで怨嗟の声が続々あがるところからしても、多くのサラリーマンたちが出世に対しての夢や願望が薄れ、それどころかかなりの不満を抱えていることが良くわかるといった状況だ。
経営側としてもマネジャー人材の不足というのは、確かに由々しき問題ではあるが、それならば昇進した者の処遇をそれ相応にアップさせるというのが、真っ当というかごくごく常識的な対応なはず。にもかかわらず、そういう待遇改善がもはや不可能、あるいは“したくない”という会社が多いのが現実となれば、日本の企業もまさに末期的状況といえそうで、なんとも暗澹とした気分にさせられるところだ。
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