台湾侵攻のダメージ学ぶ
中国は、ロシアのウクライナ侵攻に対する世界的な非難と、ロシアへ科された経済制裁を他人事として見ていないであろう。中国が、台湾侵攻の際に受けるリアクションとして受け止めているはずだ。
習近平氏は、ロシアによるウクライナへの軍事戦略を研究せよと命じた。ウクライナの軍備と台湾軍備は、格段の違いがある。陸上戦(ウクライナ)と海上戦(台湾)では異質である。中国の参考にはなるまい。
ウクライナ侵攻から、にわかに台湾が「第二のウクライナ」と言われるようになっている。
台湾当局は2月28日の声明で、ウクライナと台湾が置かれている状況は完全に異なっており、「今日のウクライナは明日の台湾」という印象操作をするべきでないと訴えた。中国が台湾を自国領の一部と主張し、過去2年にわたって軍事的圧力を強めているためだ。
台湾行政府の羅秉成報道官は、不安をあおる言説を抑える目的で、ウクライナとの違いについて具体的な説明を行った。次のような内容だ。『ロイター』(3月1日付)が伝えた。
1. 台湾は、台湾海峡に存在する自然の障壁として地政学的に重要な位置を占める。
2. 台湾は、世界の半導体製造の担い手として大事な役割を果たしている。
上記2点についてコメントしたい。
(1)台湾が島であることは、ウクライナと決定的に異なる。中国との間に台湾海峡があることで防衛上、極めて有利である。潜水艦が、中国艦船を海底から攻撃できる点で大きな利点になるのだ。台湾が、インド太平洋防衛戦略の「要」の役割を担っている。
(2)台湾は、世界一の半導体生産実績を上げている点も地政学的に有利な点である。米中対立の中で、米国が半導体を戦略物資「NO1」に上げていることからも分るように、絶対に中国へ渡してはならぬ「宝物」的な価値を持つ。
以上の2点を総合すれば、米国を中心とする西側諸国にとって、台湾防衛が死活的な問題になっている。
これを反映して、インド太平洋戦略対話の「クアッド」(日米豪印)や軍事同盟の「AUKUS」(米英豪)が結成されて、台湾防衛を固めている。
ウクライナは、EU(欧州連合)や軍事同盟のNATO(北大西洋条約機構)にもまだ加盟していない「ストレーシープ」(迷える羊)であった。ロシアという「狼」に狙われたのは不運であるが、民主主義を守る砦として、自由世界は支援しなければならない。
中国が、ロシアの後ろで台湾侵攻を狙い、爪を研いでいるからだ。
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