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ウクライナ戦争で米ドル覇権は失墜へ。ロシア制裁の「抜け道」となる人民元経済圏=今市太郎

中国はロシアに独自CIPSを開放か

ここで気になるのは、中国の存在です。

今のところ中国がロシアの戦争に加担するということはなさそうですが、この先、ひっそりと支援する可能性はあります。

というのも、中国人民銀行は2015年、人民元の国際銀行間決済システム・CIPSを導入して実際に稼働しています。これには中国や欧米の大手金融機関のほか、日本勢からも三菱UFJ銀行とみずほ銀行の中国法人が同システムに接続できる状態を確立しています。

もちろん現状ではその利用額は限られているようですが、ロシアがSWIFTから締め出されても、欧州や他の国々との資源取引が続くことになるなら、すでに89カ国でも利用されているこの仕組みが台頭する可能性が出てくることになります。

これまで原油の決済といえば、ドル建てで米ドルを利用した取引が占有してきたのはご案内の通り。

しかし、今回のロシアの締め出しによって、リアルな原油取引市場はそうはならない危険性がかなり高くなりそうです。

米国にとっては、金融面でのロシア制裁は「痛しかゆし」の状況に陥ることが危惧されるところです。

米ドルの外貨準備が制限されるなら、そもそも中国は米国債を買わなくなる

米ドルは戦後、国際間での資本取引や貿易取引において広く使用される決済通貨として機能しており、基軸通貨の座を延々と守ってきたのは厳然たる事実です。

その座が維持されているがゆえに、各国とも外貨準備といえば世界のほぼ6割が米国債を購入してドルを確保してきたわけです。

しかし今回、ロシアは蓋を開けてみれば「金(ゴールド)」「ユーロ」へのシフトを非常に強めており、2018年あたりから米国債保有額を意識的に激減させています。
※参考:ロシア、米国債を大量売却 制裁強化を懸念か – 日本経済新聞(2022年3月9日配信)

こうした状況を傍で見ている中国が、同じような動きに出る可能性は否定できません。

そもそも原油・天然ガス・鉱物資源にまで人民元建て決済が進むとなると、ドルの国際的な地位に大きな変化が出ることも想定しておく必要がありそうです。

米国債をの大口保有者である中国でさえ、将来的にその保有を激減させるリスクが高まることになります。

Next: ロシアの「ウクライナ侵攻」は習近平の罠だった?

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