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なぜインフレでも日銀は動かない?2022年冬、さらなる円安進行で中流階級の生活崩壊=吉田繁治

急な円安

FRBがインフレに対して1回目の、0.25%の利上げをしたとき、ゼロ金利の円は、1ドル=115円付近から119円まで、3.5%急落しました。(注)現在は121円です。慌てて、ドルや仮想通貨を買う人が増えました。まだ…金の買いには行っていない。

FRBが、利上げのフォワード・ガイダンス(将来の金融政策を前もって示し、利上げのときの金融市場の混乱を避けること)を行った、21年12月には、1ドル=104円付近でした。104円も円安です。

104円の円安と比較し、現在は15円(14%)の円安です。金利ゼロの通貨=円が売られて、金利が上がるドルが買われたからです。

インフレであっても、ドルやユーロのように金利を上げることのできない円は、世界の銀行の店頭で売られて、急落しました。

3か月で14%の円安への通貨変動は、「普通はない水準」です。
つまり、異常な円安です。

「米ドル/円 日足(SBI証券提供)」

「米ドル/円 日足(SBI証券提供)」

「米ドル/円 日足(SBI証券提供)」

黒田総裁の迷言

黒田総裁は、「円安は日本経済にとってプラス」という、1990年代の輸出が超過して貿易黒字があったときのことを、オウム返しに述べています。

金融ムラの総裁の経済への認識は、アベノミクスの2015年ころから、おかしくなってしまいました。

失礼を承知でいえば、バイデンに似た認知症か。記者会見ではモゴモゴしたはっきりしない発言が増えました。任期は、23年3月までです。

8年間掲(かか)げてきた、「2年で2%の物価上昇目標とGDP成長2%」を達成できず、原因の追及と確定は、行っていません。失敗とは言わない。政策の反省はない。それでも官僚総裁を許されています。

民間銀行の頭取には、許されないことです。損をした株主からの追及があるからです。国民はまだ、日銀の金融政策の失敗を追及していません。逆に、円を500兆円刷った「アベノミクス」は、どちらかといえばいいものだったとしているようです(よくなかったのですが…)。

2011年以降、日本は貿易黒字が出ない国になった

2011年3.11の東日本大震災以降(=サプライチェーン・ショック)
2011年以降の、日本経済は、高齢化した世帯(年金世帯)の貯蓄率のマイナスから、輸出が超過する経済ではなくなっています。

マクロ経済では、貯蓄額-国内投資=貿易黒字です。

高齢化のため貯蓄額が、国内の設備投資額より減ると、どんなに円安になっても、貿易黒字にはならない。

3000万人に増えた年金受給者(1,000万世帯)は、1か月に平均で5万円から6万円の預金を、取り崩しています(生活費は1か月26万円くらい)。このため、日本では総預金が増えなくなったのです。(注)個人金融資産の2,000兆円には、「銀行預金+株式+投資信託+生命保険+年金基金」が入っています。現在の増加は株価の上昇分です。

貿易では、逆に、輸入物価の上昇がモロに来て、輸入額が増えて貿易は赤字になります。貿易の赤字とは、日本人の所得が海外に流出することです。貿易の赤字は、GDPも低下させます。

輸入するエネルギー・資源が上がり始めた2021年12月には、15兆円から、20兆円/年の黒字だった経常収支すら赤字に転落しました。

円高を、もっとも大きく支えてきた所得収支の黒字(15兆円から20兆円/年)も、エネルギーと資源価格の高騰によって、なくなったのです。このため、円安のトレンドが「構造的なもの」になりました。
(注)経常収支=モノの貿易収支+海外旅行収支+対外資産からの所得収支。
参考:12月経常収支、1年半ぶり赤字 資源高響く、21年も黒字、2.8%減-JIJI.COM(2月8日付)

Next: コモディティ(商品)の価格上昇が直撃する日本の輸入構造

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