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なぜインフレでも日銀は動かない?2022年冬、さらなる円安進行で中流階級の生活崩壊=吉田繁治

金融抑圧と円安の被害を受けるのは世帯

円安の被害は、エネルギー・資源・穀物の輸入物価の上昇がCPIの物価上昇として、所得の増えない世帯の支出の増加になる家計に向かいます。

物価が上がるなかで、国民の賃金が上がらないスタグフレーションです。

普通の経済では、インフレで企業の売上も増えるので、米国のように求人が増え、賃金が上がります。

しかし、日本経済では、物価が上がると60%(3000万世帯)の所得が低い世帯が、商品が買えなくなって、企業の売上は増えない。むしろ減ります。

スタグフレーション

このため、コストプッシュ型のインフレになっても、企業の求人は増えず賃金も上がらない。

日本経済では、所得が増えない年金受給者が3,000万人にも増加した高齢化が、世界で最初に起こりました。

このためインフレは賃金の上昇という循環を生まず、2022年末から2023年には、過去に経験がない不況になっていくでしょう。価格が25%も上がった電力も、東北地震で不足し、なんだか…さんざんな経済。

米国では物価が7.9%上がって、賃金も5%上がっています(実質所得は-2.9%ですが…)。所得の増加がなく、平均では減っている日本人の生活は、インフレになると、モロに苦しくなって行きます。

世界200か国のなかで、2022年、23年の日本は、「コロナ+ウクライナ戦争」での、スタグフレーション第1号でしょう。

ロシア経済が、SWIFTからのルーブルの排除と、G7からの経済封鎖からのインフレで苦しくなるとされていますが、所得の上昇がなく、逆に減る日本は、ロシア以上でしょう。

(注)G7:米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本の西側諸国。2000年代のG7(10億人)のGDPの合計成長率は低く、中国・インド、ロシアを含む新興国の合計GDPを、下回っています。

日銀、政治家、メディアは、賃金が世界22位に下がり、スイスの70%に下がった日本を、今も「経済大国」と錯覚する誤りを犯しています(韓国が20位です)。これは、まさに32年前の昭和の錯覚。

1990年には、日本人の賃金は、世界トップクラスのスイスと並んでいました。今回の円安で、ポーランド並みの25位でしょう。ポーランドは、欧州の中進国です。ショパンと音楽とチョコレート、牛肉、高級ワインの国。
参考:「平均年収は韓国以下」日本人の給料がちっとも上がらない決定的な理由-PRESIDENT Online

MMTの副作用が発生した

基本的なところでの、約500兆円のMMT(500兆円の国債の日銀による買い)に幻惑されてきた誤認が、円安歓迎の黒田説になるのです。

実質GDPの成長は、世帯の実質所得の、上昇によるものであり、それ以外には目的はないはずです。米国より実質GDPの成長率が高まると円高になります。

政治家は、実質GDPの上昇と、世帯所得の増加を政策目標にしなければならない。それ以外に、政治家の政策の目標は、ないはずです、

2013年から8年のアベノミクスでは、「金利を下げ、通貨を増発することでの円安での名目成長」として、誤認していました。

2022年になって、米国の1年半遅れで、消費者物価(CPI)が上がる傾向が出てきた。しかし実質経済成長率と等しい国民の所得の増加はない。

超金融緩和の、500兆円のマネー増発が原因で上がった株価は、世界の金利上昇と企業純益の低下から、2022年は下がります。

Next: 2011年以降の日本にとっては。円安はいいところがない

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