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なぜインフレでも日銀は動かない?2022年冬、さらなる円安進行で中流階級の生活崩壊=吉田繁治

インフレになっても、日銀が金利を上げない本当の理由

日銀には、FRBにはできる利上げ(1回が0.25%×7回:22年3月)とマネー量の引き締め(QT)という選択肢がない。

理由は、

・1,200兆円のゼロ金利国債の平均金利が1%に上がると、
・国債価格が「1200兆円÷(1+0.01×10年)=1,200÷1.1≒1,090兆円」に下がるからです。

(1)日銀

530兆円の国債をもつ日銀では482兆円に下がり48兆円の含み損が生じます。11兆円の自己資本の日銀は、主要国では唯一債務超過に陥ります。

債務超過になっても日銀は倒産しません。倒産の代わりに、円の信用が低下して(海外から売られ)、円安になります。そもそも政府機関には、どんなに損をしても倒産という概念がありません。

夕張市の財政が破産しても、市の行政組織は別のものには交替せず、残っています。2回財政破産したNY市も同じです。

大きくいえば1,200兆円の負債をかかえ、金利が2%に上がるだけで破産に向かう日本政府がデフォルトしても、政府がなくなることはない。デフォルトとは、政府が支払うべきものが、払えないことです。

「特別会計の二重計算の除外(196兆円)+一般会計(107兆円)の、財政支出」で大きなものは、(1)公務員の人件費(25兆円)、(2)年金の支払い58.5兆円、(3)医療費40.7兆円、(4)介護費12.7兆円、(5)子育て支援等9.5兆円です。(注)国債費は、架空の60年償還と決めて、金利払いを含んで23.7兆円です。実際の平均満期は、8年ですが…。
参考:日本の財政関係資料(令和3年10月)https://www.mof.go.jp/policy/budget/fiscal_condition/related_data/202110.html

参考:特別会計の現状-財務省

(2)金融機関

長期金利が1%に上がるだけで、

・670兆円の国債をもつ金融機関(民間銀行、政府系銀行、年金運用のGPIF、生損保、120兆円の円国債をもつ外銀)に、61兆円の含み損が生じます。

国債の10%近い下落は「国債の不良債権化」を示すものです。

金利が1ポイント(%)上がると、確実にこうなるので、日銀は、日本のインフレ率が高くなっても、金融引き締め(=金利を上げること)に転換できない。

日銀が、2013年から9年間の金融緩和からの出口(=利上げ)政策をとれば、1,200兆円の既発国債の価格が下がって、政府の財政破産になるからです。

・米国経済のアキレス腱は、株価の下落です(時価総額5,000兆円)。
・日本経済にとっては、インフレで上がる金利です(国債1,200兆円)。

いずれも、インフレによる金利の1ポイント(%)の上昇から、2ポイントの上昇に向かうトレンドが金融市場に認識され、レバレッジ投資が剥がれて暴落していくでしょう。まず、円安に、これが表れています。

・日本では、国債がGDPの240%と大きすぎます。今年も、財政の資金収支での赤字43.6兆円のため、増えています。

・米国では、GDPの220%の時価総額5,000兆円の株価が、大きすぎます。30%下がって、短期での反騰がないと、金融危機に直行します。

「バフェット指数」では「GDP=株価時価総額」付近が最適とされます。米国株は、リーマン危機+コロナ危機での、合計10兆ドルの増発によって、株価も時価総額がGDPの2.2倍に膨らんでいます。

歴史上最大のマネーの増発による、バブル株価です。

長期金利が3%から4%に上がる動きが見えると、米国の株価バブルは、崩壊します。現在は長期金利2.2%と7.9%のインフレで、崩壊寸前です。

長期金利は、FRBのコントロールの外にある、民間市場の金利です。FRBが誘導するのは、財務省短期証券の金利です(FF金利という)。
(米国の長期金利=10年債の利回りは、現在2.2%付近)

「米国国債10年 日足(SBI証券提供)」

「米国国債10年 日足(SBI証券提供)」

米国のもう一つの弱点は、対外債務3,000兆円です。国債・社債・米国株の価格が下がると売られて(価格は下がり)、米国の長期金利が上がるサイクルに入ります。

インフレからの、悪い金利の上昇は、13年間の量的菅緩和の金融を、逆に回転させます。

ローン金利に敏感な米国の住宅価格も下がって、リーマン危機のときのように、MBSに不良債権が増えていきます。

一般会計の資金収支の赤字は、43.6兆円(GDPの8.2%)と大きい

2022年度の、一般会計の資金収支の赤字は、43.6兆円です(日本:財政予算106.6兆円-税収予定63.0兆円=資金の不足43.6兆円)。

参考:これからの日本のために財政を考える-財務省

国債は、1960年代の発行開始から1円の純返済もないので、43.6兆円国債の残高が増えます。(上の財務省パンフレットの2ページと3ページ)。

借り入れを繰り延べるための「借換債(約150兆円)」を含む、「約200兆円/年の国債発行」は、GDPが540兆の日本にとって、恐るべき数字です。平均8年で満期償還される150兆円/年で、銀行は新規債を買っているのです。(注)150兆円の借換債(これも国債です)のことは、メディアも報じません。財務省が「そっと」しか言わないからです。官僚の基本性格がこれです。

Next: 円安の進行をうながす黒田制裁の迷言

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