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なぜインフレでも日銀は動かない?2022年冬、さらなる円安進行で中流階級の生活崩壊=吉田繁治

現在の物価と金融の状況からは、2022年夏から2023年の、(1)インフレ率、(2)金利上昇、(3)株価暴落、(4)国債・社債価格の下落、(5)不動産の下落も85%は、決定したように思えます。1年前は想像しなかったことが、ウクライナ戦争を契機に起こっています。2022年、23年は「大変」な時代です。大変とは、戦後世界の基礎が80年ぶりに変わることです。怖がる必要はない。情報を数値(=事実)で集め、論理的に解析し、予想ことです「80年も当たり前」だったことが「当たり前」ではなくなっていくでしょう。2022年冬には、行動を変える必要があるように感じています。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2022年3月23日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

今回の危機は金利を上げるインフレが加わっている

化石エネルギー・資源・穀物(食糧)のインフレ→金利の上昇→マネー量の縮小→株価と債券の下落

ウクライナ戦争の状況から、インフレは長期化が予想され、世界の中央銀行の、親玉であるFRBは、1回0.25%だけでなく0.5%の利上げもあることを示唆しました。昨年の8月、9月、CPIの上昇は短期的」としてきたパウエルは、しれっと、予想を変えたようです。

「言葉の信用」が命であるはすの中央銀行には、こうした「いい加減」なところがたびたびあります。根本で、フィアットマネーの増刷という、国民をまやかす金融詐欺(=錬金術)を行ってきたからです。

錬金術は、当方の言葉でない。大英銀行の元総裁マーヴィン・キングです(書籍は『錬金術の終わり』)。錬金術は近世の化学でした。

特に西欧で、数多の人間が試みたのです。比重が金と同じタングステンに、金メッキをすると、見かけは純金になります。当時の金商人の秤ではわからない。銀や銅の混ぜ物も使われました。

2022年の金融・経済の危機では、

(1)コロナによるサプライチェーン・ショックからのインフレと、
(2)2月末からのウクライナ戦争が惹起したエネルギー・資源・穀物の高騰が重なりました。

これは、従来はなかったことです。

過去の大きなインフレは、(1)1973年からの第一次石油危機(原油2ドルから10ドル、15ドル)、(2)1979年から1980年の第二次石油危機(原油40ドル)でした。今回は、コロナ危機+ウクライナ戦争が重なった第三次石油危機です。

消費者物価指数(CPI)が5%上がるインフレのときは、

・市場の期待金利の上昇から株価が下がっても、
・中央銀行には、量的緩和と利下げという手段はないことが、重要な点です。株価の暴落があっても、中央銀行が対策を打ちにくい。

米国CPIの上昇は、2021年4月の4.2%から始まりました。その後も上げを続け、直近の2022年2月には7.9%の上昇という高い水準です。

米国CPIの年間予想は、ウクライナ戦争の推移が関連しますが、5%程度でしょう。戦争が終わっても、資源価格の短期的下落はあっても、長期的な下落の期待は薄い。産油国、とくにサウジの増産の姿勢が弱いからです。
参考:消費者物価指数(CPI) [前年同月比]

欧州も、米国を追った動きであり、2022年2月は前年比5.8%です。
参考:消費者物価指数(HICP、速報値) [前年同月比]

今回のインフレは、FRBの誘導金利(FF金利:短期金利)が2%に、市場が決める長期金利は、3.5%~4.0%に上がることを意味しているでしょう。

リーマン危機以降の13年間、ほぼゼロ金利で上がってきた世界の株、国債、社債の価格は大きく下がるということです。これらの債券の価格が下がることは、直接に、マネー量の収縮です。

コモディティ価格が上がると打撃を受ける日本の輸入構造

日本では、国際商品コモディティ(エネルギー・資源・穀物)が多い輸入物価が、円安も加わって、37.5%上げています。

国内の企業物価は8.6%上昇、消費者物価は、0.5%です(21年12月)。2021年の、菅首相による携帯電話の値下げ(-50%)があったので、実際の物価上昇(総合)は2.0%付近です。

企業物価(=卸売物価)が8.6%上がったのに、消費者物価が2.0%しか上がっていないのは、「世帯の所得増がないので、値上げすれば売れなくなる」として、上がった仕入価格を、企業利益の減少で吸収しているからです。

これは、長続きができない。商品を売る企業が赤字になるからです。2022年は、日本も3%台のインフレに向かうでしょう。生活に必需な財のインフレは、第二次石油危機(1980年)以来、40年ぶりです。

永遠に続くかとも思えたディスインフレの40年は終わりました。物価の基礎でもある公示地価は上がっているとされますが、それは、昨年の地価の統計です。2022年には、確実に下がります。
(注)次のGDP成長は、2030年ころのAI革命からでしょう。

輸入物価の急上昇に対する、日銀の、おかしな態度

日銀は、「CPIの物価上昇は短期的として、金融緩和の継続」を言っています(日銀黒田総裁の会見;22年3月18日)。これは、リフレ派の妄言でしょう。根拠がない発言です。

Next: 輸入物価の急上昇に対して金融緩和を持続させる日銀のおかしな態度

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