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英・仏の「受信料撤廃」も全く意に介さぬNHK。住所だけで送れる「特別あて所配達郵便」の積極活用で狙うは“強制徴収体制”の盤石化か

日本郵便が新たな郵便サービス「特別あて所配達郵便」を、6月21日から本格導入すると報じられたことが、大きな波紋を呼んでいるようだ。

宛先の名前が分からなくても住所だけで送れる「特別あて所配達郵便」は、受信契約のない家庭などを人海戦術で回っているNHKの受信料の徴収業務を支援するため、昨年6月から試験的に導入されていた。

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これに対しインフラ系の企業などからの引き合いがあったといい、日本郵便は収益が確保できると判断。今回の本格導入に至った模様だ。

サービス低下も指摘される日本郵便

「特別あて所配達郵便」に関しては、昨年NHKが受信料徴収に同サービスを理由すると報じられた際にも、多くの反発が寄せられる事態となっていたのだが、今回それが本格導入されるとあって、「リアルスパムメール」「詐欺に使われる可能性が…」などといった批判の声が再びあがっている。

そうでなくとも、このところ日本郵便に対しては“サービス低下が著しい”との声が多くあがっている状況。昨年10月には、郵便物の土曜日配達・翌日配達をやめてしまったうえに、配達日数の目安も1日程度段階的に繰り下げとなっていたのだが、それが影響したのか今年のゴールデンウィークには全国的に配達の遅れがあったと、大いに取沙汰されているのだ。

いっぽうで、その内情もボロボロのようで、今年1月には「正社員と非正社員の待遇に不合理な格差がある」との最高裁認定を受けての改善策に“正社員の休暇を減らす”といった内容が含まれていたことが判明し、「待遇改悪で格差是正か?」と多数の批判を受けたことも。配達員のモチベ低下も深刻のようで、いわゆる“郵便物破棄”の報道も事あるごとに耳にする状況だ。

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このように、最近はあまりいい話を聞かない日本郵便だが、今月13日に発表された日本郵政の2022年3月期決算をみても、郵便・物流事業の売上高(営業収益)は2兆412億円(前年同期比1.3%減)、営業利益は1022億円(17.4%減)と、ともに厳しい結果に。なかでも「ゆうパック」に関しては、2021年度の引き受け数が前年度比9.4%減の9億8857万個と、コロナ禍におけるネット通販需要の急増を追い風にライバルのヤマト運輸や佐川急便が過去最高数を記録するなか、9年ぶりに減少したと報じられている。

それこそ郵便物に関しては、20年前から引き受け数が減り続けているとされるなど、じり貧の状況が続く日本郵便。そんななか今回取沙汰されている「特別あて所配達郵便」は、大口の利用が見込めるサービスだけあって、本格導入へと動いたのも分からなくもなく、それによる評判低下の恐れも最早気にしていられないといったところだろうか。

英・仏では公共放送の受信料が廃止へ

いっぽうでNHKとしては、受信料徴収にかかる経費の削減を迫られるなか、全国に配していた訪問員といったスタッフの削減、さらにその半数超を占める外部業者への委託契約に関しては、2023年9月までに全廃する方針とあって、それに代わる徴収活動の“切り札”として、この「特別あて所配達郵便」に寄せる期待は大きい模様。

ただそれ以前の問題として、NHKにとっては耳の痛いニュースが、ここに来て相次いで報道されている状況。というのもイギリスのBBCにくわえて、フランスの公共放送においても、受信料が撤廃される動きがあるというのだ。

報道によると、イギリス政府は先月下旬に放送に関する白書を公表し、そこには2027年にもBBCの一律徴収制度が終了する可能性があると記されているという。視聴者が減少したことで一律徴収に不公平感が高まっていることが原因とされており、代替財源として広告の導入やネット視聴に対する課金などが浮上しているとのこと。

さらにフランスでは、先の同国大統領選で当選したマクロン大統領が、その公約に受信料廃止を掲げており、それに従って2022年から公共放送の受信料が廃止になるということだ。

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NHKの受信料に関しては、かねてから廃止論やせめてスクランブル放送にしろといった声も根強く、そんななか海外の公共放送がこのような流れとなれば、日本国内での議論にも多少なりとも影響が出てくるのでは……といった見方も。ただNHK側は、最近ではネット配信「NHKプラス」で“ネット受信料”導入への布石を打つことに余念がなく、さらには今回の「特別あて所配達郵便」も積極的に活用するなどして、現行の受信料徴収体制は何が何でも崩したくないといった様子だ。

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