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ウクライナの敗色濃厚?欧米メディアは掌返し、日本では報道されない本当の戦況とロシアの勝利条件=高島康司

西側のトーンの大きな変化

ウクライナ軍の劣勢とロシア軍の攻勢を受けて、これまでウクライナの勝利を確信していた西側の態度にも変化が見られ始めている。そのきっかけとなったのは、キッシンジャーの発言である。

5月23日、キッシンジャーは、スイス東部ダボスで開かれている「ダボス会議」にオンラインで参加した。そしてウクライナ情勢について「今後2カ月以内に和平交渉を進めるべきだ」との見解を示すとともに、「理想的には、分割する線を戦争前の状態に戻すべきだ」と述べた。また「ロシアが中国との恒久的な同盟関係に追い込まれないようにすることが重要だ」と強調した。

この「戦争前の状態」という言葉は、ロシアが2014年に併合したウクライナ南部クリミア半島や、親ロ派勢力が支配する東部ドンバス地方の割譲を意味するとの受け止めが広がった。要するに、停戦合意をするためには、ウクライナにも一定の領土の妥協が必要であると示唆したのだ。これはウクライナの妥協なしに停戦はあり得ないとする認識だ。

また、「ニューヨークタイムス」も5月26日に「どのように終わるのか?ウクライナの勝利の定義をめぐって生じた亀裂」という題名の記事を掲載した。そこには次のようにある。

「ゼレンスキーは、ロシアを大規模な侵攻が始まる前の2月23日時点まで押し戻したい、と何度も言っている。そうして初めて、ウクライナはロシアと停戦と和解について再び真剣に交渉する準備ができる、と彼は言っている。

しかし、欧州の高官や軍事専門家の中には、こうした目標でさえ野心的だと考える者もいる。そのためには、ウクライナはケルソンと破壊されたマリウポル市を取り戻さなければならない。クリミアへの陸橋からロシアを追い出し、ドネツクとルハンスクの大部分をロシアに併合させないようにしなければならない。(中略)

多くの専門家は、それがウクライナの能力を超えていることを懸念している。ウクライナは戦争の第一段階で目覚ましい成果を上げたが、ドンバスは全く違う。通常、攻勢に出るには、武器は別として3対1の兵力の優位性が必要だが、今のウクライナにはない。ロシア軍は、高い犠牲を払ってでも、ゆっくりと、しかし少しずつ前進している。」

これは要するにウクライナには勝ち目はなく、ロシアが目的を実現するだろうと予測した記事だ。

ウクライナの勝利が困難なことを匂わせる発言は、米統合参謀本部議長のマーク・ミリー将軍も行っている。5月24日、フォックスニュースとのインタビューで、ロシアとウクライナの戦争がどのような結末になるのか聞かれて、次のように答えた。

「いま我々は、ウクライナ軍とロシア軍のドンバスで起こっている非常に重要な作戦の結果が出るのを持っています。今後数週間でどのようになるかで、おそらくこの戦争の結果が決まるでしょう。

戦争は延々と続く可能性があります。最終的には膠着状態になるかもしれません。また反対に、どちらか一方が決定的な勝利を収めることになる可能性もあります。さらに和平交渉で終わる可能性があります。交渉した結果は論理的な選択ですが、双方が自分たちでその結論に到達しなければならないでしょう。

これはウクライナとロシアの間の戦争です。これが戦場でどのように終わるかは、ゼレンスキー大統領とプーチン大統領によって決定されるでしょう。」

これは米統合参謀本部議長のマーク・ミリー将軍自らが、ロシアの勝利の可能性を示唆した発言として話題になっている。

Next: ロシアが戦争を仕掛けた狙いは4つ。ほぼ目標は達成した?

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