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超円安で「悪いインフレ」到来、日本人は人生ハードモードへ。来たるスタグフレーションに備えて資産を築く方法は?=俣野成敏

悪いインフレの典型?「フィッシュ&チップス」のお店が軒並み窮地

俣野:激しいインフレを前に、イギリスの企業はどのような状況でしょうか。

織田:物価上昇分を価格に転嫁できた業界は、賃金も引き上げ、好調に推移している一方、それができない業界はジレンマに陥っています。その代表例が、フィッシュ&チップスです。

俣野:かつてイギリスの国民食とも言われたソウルフードですね。

織田:フィッシュ&チップスとは、揚げた白身魚にフライドポテトを添えた料理のことです。白身魚に使われているのはロシア産の鱈(たら)で、ロシアからの輸入ができなくなったことから、コストが激増しています。

しかし、その分を価格に転嫁した場合、「この値段なら他の料理のほうが良い」と客が流れてしまう可能性があり、なかなか値上げに踏み切れていません。

このままでは、イギリスにあるお店のうち、3分の1ほどしか生き残れないのではないかと言われています。

俣野:フィッシュ&チップスが直面している状況が、“悪いインフレ”の典型だと。

織田:そうです。フィッシュ&チップスの問題は、「平成の日本」が経験したことそのままです。

悪いインフレに、どう対処したらいいのか?

織田:当時、コスト増を価格に転嫁できなかった日本企業の多くは、商品の中身を少なくしたり、企業努力をしたりすることで対応しました。これが、平成をデフレ時代にした要因の1つだとも言われています。

コストを適正に価格に反映できなかったため、そのしわ寄せは、当然ながら労働者にも向かいました。

総務省統計局の調査によると、平成の30年間で、日本の生産年齢人口(15歳~64歳)は1,030万人減少しました。ところが、正規雇用が29万人減ったのに対して、逆に非正規雇用は1300万人も増加しました。

この非正規雇用の拡大が、賃金が上がらない大きな要因になっていると思われます。

俣野:いびつな雇用体系が改善されない限り、賃金も上がらず、経済的にも立ち直るのが難しい、ということですね。

当面、賃金の上昇が見込めないとなると、まずは今ある資産をしっかり守ることが大切かと思いますが、円安による資産価値の目減りに関して、何か打つ手はあるでしょうか。

織田:資産保全に関して、イギリス人たちがどうしているのかというと、彼らの多くは自国不動産を投資対象と捉えて投資を行なっています。激しいインフレに見舞われている反面、インフレによって不動産価格も上昇しているため、家計資産も増加しています。

日本も不動産価格は上昇しているとはいえ、賃金が上がらない中での不動産投資は、現実的とは言えないでしょう。

Next: 今、日本円で資産をつくるのは難しいのが実情

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