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孫正義氏が大損した4つの理由。ソフトバンク・ビジョンファンドは最初から極めて危険だった=矢口新

<2. 巨額の資金は焦りの現れ?>

ベンチャー1社に1兆円投資して何を得たいのか?倍になれば2兆円?どうして1ディールだけで兆円単位の儲けが欲しいのか?

私にはそこに投資家としても、企業経営者としても、何ら「純粋なもの」を見出せない。

ディーラーが破滅する時、しばしば巨額の資金を扱うようになる。にわかにビッグ・プレーヤーとして有名にはなるが、実態は、巨額の資金でしか巨額の損失を取り返せなくなっているのだ。

「金持ち喧嘩せず」とは、金持ちは、リスクを取らなくても、事態を納められる。事態が悪くなることはないということだろう。

では、「金持ちになっても喧嘩する」のは、リスクテイカーとしてカッコイイだろうか?

仮に金持ちが自分の身体を張って喧嘩するならば、カッコイイかも知れない。しかし、ファンドとして他人の資金や、企業経営者としてソフトバンク社全体を巻き込むことは避けるべきではなかったか。

<3. 無理を強いられるスキーム>

1号ファンドは1,000億ドルで、ソフトバンクは3割出資で成果分配型だ。7割は外部出資で、4割は固定分配型、3割は成果分配型だ。

問題は、この固定分配型で、投資してもしなくても、評価損が出ていても、毎年投資元本の7%を支払わねばならない。400億ドルの7%は28億ドルになる。ドル円135円で、3,780億円だ。

「1号ファンドでは1社に1兆円近いような投資をし、大振りで三振というものがたくさんあった」のは偶然ではない。固定分配だけで毎日10億円以上が流出していくファンドなので、じっくりと投資先を吟味などしていられないのだ。

熟慮すれば大損する、突っ走るしかないスキームでも成功できるとすれば、世の中全体がバブル化している時だけではないか?

<4. バブルは必ず崩壊する>

2021年末までの世界の金融市場は未曽有の金融緩和と、前代未聞の財政支出がもたらしたバブルだった。どちらも、これまでとは桁違いの資金供給を行った。世界的なインフレもそれが主因だ。

バブルの構造を考えてみよう。

100万円の資金がある時、100万円の投資物件を買えば、もう買えない。200万円になったものを売ると、もう200万円のものは買えない。手数料やスプレッド、税金などで200万円以下になっているからだ。

これを市場全体に広げてみても、100万円以下や200万円以下の投資物件に広げて見ても、突き詰めれば、同じようなことになり、そこからの値上がりはない。

値上がりするのは、新たな資金供給や、新たな信用供与がなされる時だ。使える手持ちの資金が増える時だ。リーマン・ショック後の世界には、マイナス金利や未曾有の資金供給によって、使える手持ちの資金が急増し、資産バブルが引き起こされた。仮想通貨を含め、基本的には何を買っても上がったのだ。

それはコロナ・ショック後に、大掛かりに再開された。そして、誰もが見たことのないような相場となった。SPACやNFT、ミーム株なども、そうした極限のイージーマネーで盛り上がったのだ。しかし、上げたのは投資物件だけでなく、物価も急上昇した。

資金供給や信用供与が永遠に続くならば、バブルの継続は可能かも知れない。MMTは正当化されるかも知れない。ところが、実体経済をはるかに上回る資金供給は必ずインフレに繋がるので、MMTは一時的なあだ花に終わる。バブルも、所得の分配をいびつにしただけで終わる。

Next: バブルは弾けるからバブル。ビジョンファンドの試練はここから

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