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1ドル144円で日本沈没。政府・日銀の経済の舵取り失策で日本国民が迎える“円安地獄”の阿鼻叫喚=吉田繁治

円安で儲かるという幻想は昭和の残滓

日本を30年間続けて世界平均で貧困にしてきた「円安」幻想からは、もう政府・日銀・経団連は、目覚めなければならない。37年も経ったのです。今後は、海外の商品を安く買える円高こそが、国民生活を豊かにします。

日本のGDPシェアは、32年で1/3に落下

世界市民の立場で見たとき、世界通貨は何でしょう。現在は、まだドルです。戦後の77年ずっとドルです。米国、欧州、中国、韓国と、物価と所得を比較するとき、ドル換算で見ます。不動産価格や株価も、ドル換算した上での対外比較しかできない。

ドルベースで見たとき、日本の1990年のGDPシェアは、18%でした。当時は米国のGDPが約30%でした。中国のGDPは1990年には世界シェアが3%もなかった(現在は20%)。

日米両国で世界のGDP(=商品生産量=所得=需要)の48%と、ほぼ半分を占めていたのです。英国エコノミスト誌からジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた時でした。

現在は日本のGDPのシェアは6%(530兆円)です。32年間の日本経済の成長率は、世界平均から3.5%は低かったのです。

世界平均は3.5%/年で成長し、日本経済はゼロ成長でした。これが32年続いた。1ドル=140円台への円安は、日本のGDPのシェアを5%に下げます。日本を対外比較で貧困にしていくのです。

32年、ものすごい勢いで世界平均に対する「日本の貧困化」が進んできました。

貧困化に気づかず満足している国民

内閣府が、世帯所得の海外比較の数字を出さなくなったため、国内の円でのGDPでの数値から「経済と所得では、横ばいが続いている」という、大いなる錯覚が続いてきたのです。

賃金、会社の売上、利益も「人口減の中で横ばいなら、まぁ、いいか」とされてきたのです。

1960年代の日本は貧困でした。米国の1/3の所得の60年代貧困に満足している人はいなかった。1960年代には、敗戦後貧困から所得を7年で倍増するという意識が、経済成長を生んだのです。

現状への満足からは、つらいことと、喜びがある努力が必要な成長は生まれません。経済成長には、成長の障害を克服した「先行モデルの学習」が必要です。学習は、80年の生涯において必要です。

年収500万円のときは1,000万円、1,000万円のときは2,000万円、2,000万円なら5,000万円や1億円という、目標の自己設定と達成への努力が必要です。目標を高くして、方法を探すことが自己経営の戦略です。目標を次々に高めていく。これは、苦しいことでもあります。

1960年代は、設備投資がGDPを成長させるという「成長経済論」が盛んでした(香西泰『経済成長』)。日本は、世界1、GDPの中の設備投資比率が高く、このため、二桁成長していたのです。

マネタリズム風に通貨を増発することは無益だ。設備投資の増加が、生産性を高めて経済を成長させるというものであり、これが「永遠の正解」です。

現代では、物的な設備投資(50%)に加えた、デジタルIT投資(50%)です。物流機器と設備50%、アプリケーションのIT投資50%、これがアマゾンモデルの投資です。

正社員、結婚が目標のロストジェネレーション(40歳代以下)

20代、30代にとって、結婚ができない非正規やアルバイト(年収300万円未満)から「正社員」になること、結婚することが目標である現状は、いかにも、辛い。低すぎる目標になったのは、30年間の「経済が成長しない日本社会の空気」からです。

昭和世代の60歳代以上の人にとって、まさか、正社員雇用や結婚はライフプランの目標ではなかった。もっと高いところにあったはずです。結婚のときも、結婚式でも、目標が達成できたとは思わなかったはずです。

ところが、平成生まれの、SNSの「(自分の)物語」を読むと「学生から社会人」になったとされるのは、正社員雇用のときと、結婚のときです。

安倍元首相銃撃の、山上容疑者(41歳)を含む40代までは「終身雇用が崩壊したあとの、ロストジェネレーション」と言われます。

アルバイト、パートを転々とし、結婚しないことが普通になっています。41歳の山上徹也氏が、仮に、正規雇用の正社員で普通の結婚をしていれば、自分と家庭を破壊する殺人の誘惑に駆られることはなかった。

救いがない悲惨な犯罪を引き起こすのは、社会に何かの恨みもっているロストジェネネーション世代に多い。100社、200社回っても、自分が採用されなければ、普通の神経の人は、社会に恨みを抱くか落ちこんで、軽い自閉症気味に自己卑下するでしょう。

意識の閉じこもりは多い。達成のコンピュータゲームが流行る理由がこれです。学校でのイジメも多い。子供たちは、本能的に集団(徒党)を組むからです。井戸端会議は、ムラ社会の「意見の相互確認」の場でした。

孤立や孤独に耐えることのできる人は少ない。社会の病は、非正規の増加と、組織(=社会)に帰属できない失業から生まれます。物価と雇用が経済学の最大問題である理由です。非正規雇用者は、会社から排除されているという意識をもっています。

知的能力は高く見える山上容疑者の家族と親族は、高学歴であり、社会的地位が高いとされる職業に就いています。彼だけが、非正規転職の多い無職です。

しかし、憧れの正社員の初任給も、1990年から、20万円~23万円であり、32年変わっていません。これが、GDPが32年も横ばいであるということの、賃金(個人所得)での意味です。
参照:初任給-独立行政法人 労働政策研究・研修機構

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