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1ドル144円で日本沈没。政府・日銀の経済の舵取り失策で日本国民が迎える“円安地獄”の阿鼻叫喚=吉田繁治

ドル円はついに144円を突破しました。恩恵を受けるのトヨタなどの輸出企業だけで、国民の大部分は貧困地獄に突き落とされるでしょう。政府・日銀が昭和の価値感で経済政策を行ったつけを受けるのは安価な賃金で働かされる国民なのです。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2022年9月4日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

144円の円安でも無策の日銀

22年3月から、円/ドルが144円に下がりました。115円から140円まで、6か月で29円(22%)下落。歴史的水準です。政府・日銀は傍観視しているだけです。

GDPでの成長効果がなかった2013年4月から9年余のゼロ金利、500兆円の円増刷のあと、日銀には、残る金融的な対策がないからです。

日銀は「信用」を使い果たしてしまい、副作用である円安と、2%の目標を超える物価上昇になっていて、秋には2.5%以上に上がる物価を下げる手段はない。物価を上げる過度な円安から、円高にもっていく方法もない。

金融な対策とは、ファイナンシング、日銀にとっては国債(債券)の売買です。

株式だけで儲ける企業の金融化

簿記・会計は、過去の金融の記録ですが、債券によるファイナンスは、未来の、マネー調達の金融です。世界経済は、米国を先行事例として、1990年代から、金融化してきました。

2000年代初期の時期、あるITベンチャーの30代のCEOは、「1枚10円のコストで株券を刷ると、5万円のお金になる。わが社は、日銀と同じだ」と言っていたのです。CEOは六本木ヒルズ族でしたが、株式の劣後負債が大きくなって下がり、売上は停滞して潰れました。

株式は、資本市場でマネーになります。アップルが筆頭の米国の5大IT産業(いずれも時価総額100兆円以上)は、株式の発行(=マネー印刷によるファイナンス)で成長してきたのです。

孫正義のソフトバンクは、成長すると目星をつけた中国IT株を買収して、大きくなったのです(現在の時価総額は9.46兆円=30兆円から1/3に下がっていて危険なレベル)。ファイナンシング会社です。

円安策だけだった政府・日銀の外為政策

経済の1世代を超える、37年前の1985年のプラザ合意(ドルの1/2への切り下げ=2倍への円の上昇)から、政府・日銀の外為政策は、「ドル買い/円売りによる円安政策」だけでした。

原因は、1990年からは個人所得が増えないため、内需(個人消費+企業投資)は増加せず、外需(=輸出)の増加によって、GDPの成長を促すことが国策だったからです。(注)GDP=内需(個人消費+住宅建設+民間設備投資+政府財政)+外需(輸出-輸入)

2020年以降、退職世帯(主たる収入が夫婦で月額22万円の年金世帯)の増加によって、貯蓄率も低くなり、マクロ経済では貿易黒字は増えない構造になっています。

非正規雇用と年金生活世帯の急増

30%に増えた非正規雇用者は、食費に手一杯で、貯蓄ができない。同じく30%に増えた年金世帯は、預金を毎月5万円引き出しています。1990年まで、世界1貯蓄率が高かった日本は(貯蓄/可処分所得=15%以上)、10%、5%、3%と下げてきたからです。

その中で、円安になるゼロ金利と円の増発(日銀による国債の現金化=マネタイゼーション)の政策がとられたのです。ゼロ金利と通貨増発は、1単位の通貨の価値を下げる政策です。

不景気の際の、一時的なものであった金融緩和は、1998年の金融危機から常態化し、2013年からは異常な金融緩和(=異次元緩和)になってきたのです。

貯蓄率が低い場合、円安になっても、輸出は増えません。ドル決済の輸入金額が上がるだけで、黒字だった貿易も、赤字に向かいます。2022年は年間換算で輸入物価が45%以上も上がって、15兆円の貿易赤字になっていています。

世界に対する日本経済の、最大の強みだった「輸出力」は消えたのです。
(注)輸出力の高い経済は、まず日本とドイツでした。2000年代は、中国とアジアです。

Next: 中国人が日本の土地を爆買い。円安で進む“日本売り”

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