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ユニクロはなぜ労働生産性を3倍に上げられたのか?日本総貧困化の原因と解決への道標=吉田繁治

設備投資を怠った日本企業

高度成長の時期の、労働と設備投資

中国のような高度成長は、2つの要因で果たされました。

1)1人当たり生産性の低い農業と一次産業から、機械により工業化され、生産性が高い二次産業への労働移動。これよって賃金が増えたのです。

農家からの集団就職がその典型でした。高校・大学への進学も増え、会社勤務になっていったのです。昭和時代のことですが・・・。

2)旺盛な貯蓄率を背景に、その貯蓄を銀行から借りて、新しい設備投資をすること。機械化された新しい設備によって、人的生産性が上がって言ったのです。
これが、1990年まででした。

1990年以降の、設備投資は減価償却費を下回っている

1990年以降は、世界の設備とオフィス投資はIT化、つまり業務アプリ開発と、インターネット化を伴っていたのです。

しかし、資産バブル崩壊(不動産と株価は60%暴落)の後だった日本では、企業は借金を増やせず、もっぱら、資産縮小で大きすぎるようになった、借金を返済しました。

設備投資は

・国内の比較コストを上げる円高によって海外への工場移転になり、
・国内の設備投資は、減価償却費以下(100兆円)の80兆円台に減りました。

減価償却費は、建物や機械の劣化分(陳腐化分)を、経費にしたものです。木造住宅は22年、鉄筋のマンション47年、機械は5年から15年、普通乗用車は6年、パソコンは4年です。償却期間内に、同じ金額の投資がないと、国全体が「老化」していきます。

ITとアプリでの遅れ

米国のようなIT投資、アプリの開発投資、インターネットの利用に遅れました。米国では1995年のWindows95が、業務アプリのインターネット化の開始年でした。

この時期、アマゾンも100万冊の書籍のネット販売で登場し、メーカー・卸が乗り入れるマーケット・プレース(商品販売のプラットフォーム)の仕組みを作って、現在は1億品目を販売しています。

日本が、1990年代以降、1)新しい設備投資、2)オフコンからオープンOS(WindowsやLinux)のアプリ開発、3)アプリのインターネット利用に遅れたことが、GDPの成長と人的生産性の上昇が止まった原因です。大型機だったIBM互換の日本的オフコンでの成功(NEC、日立、富士通、NTT)が、パソコンへの移行を遅れさせたのです。技術者にはパソコンを馬鹿にする空気がありました。

赤字国債を発行しても貧困層が増える悪循環

政府の赤字国債(=財政拡張)は、累積1000兆円だったが…

政府は、赤字国債の発行(これが財源)によって、財政支出を拡大しました。これはGDP成長の3要素(企業の新鋭の機械導入をともなう設備投資、オープンシステムの業務アプリの開発、インターネット化)には貢献しません。

約20年、金利をゼロ水準にしても利益は借金の返済に向かい、設備投資は増えず、GDPは成長せず、1年に5%は伸びるべき人的生産性は高まらなかった。

時間賃金が1/3と低い非正規雇用が30%

生産性が高まらなかった企業は時間賃金が3倍高い正社員を減らし、30%の仕事を、時間賃金の平均が1,000円くらいの非正規雇用に転換してきました。8時間働いても年収200万円。

会社員なら、1990年代半ばまでは、1人で平均年収600万円が当たり前でした。ところが1995年以降、6,000万人の雇用者の中には、30%の年収200万とそれ以下の階級が増えてきたのです。母子家庭も30年で1.7倍に増えています(130万世帯)。

1980年代までは多かった専業主婦は30%に減り、70%の世帯は共稼ぎです。2人が働いて世帯所得の平均は、547万円です。

世帯の所得分布

所得の分布では、547万円の平均以下の世帯が61.1%です。
出典:平成21年国民生活基礎調査の概況-厚生労働省

所得の階級     世帯構成比
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・200万円未満  19.5%(1033万世帯)
・200~400万円  27.2%(1442万世帯)
・400~600万円  18.9%(1001万世帯)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・600~800万円  13.3%( 705万世帯)
・800~1200万円 14.1%( 742万世帯)
・1200~1800万円 5.7%( 302万世帯)
・1800万円以上  1.6%( 85万世帯)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(注)2009年の統計ですが、現在は、これより悪化しています。政府は14年この統計を取っていません。岸田首相は、2021年秋の総裁選のとき「所得倍増」を政策にするとしていました、官僚から「ムリだ」と言われたのか、いつの間にか消えました。

所得統計を見るたびに哀しくなってきます。世帯年収600万円以下の世帯が毎年増えたのです。政治家は悲惨な統計を見ているでしょうか。

日本では「貧困世帯が50%」になってしまった。今は貧困でも、将来は豊かになることもできるという希望がないことが、もっともよくない。非正規から正規になることが夢では、哀しすぎます。

人は将来への希望で生きます。懸命な努力ができるのは、希望があるからです。病気や怪我の痛みに耐えることができるのは。回復への希望があるからです。

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