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ユニクロはなぜ労働生産性を3倍に上げられたのか?日本総貧困化の原因と解決への道標=吉田繁治

ほとんどの日本企業は、30年もの間、労働生産性が上がっていません。日本経済が克服すべき最大の問題は生産性を向上させることにあります。そんな状況の中、ユニクロは同業他社の3倍まで生産性を上げられました。なぜ、日本企業は生産性を上げることができないのか、その原因と解決法について考察していきます。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2022年9月21日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

日本のGDPはなぜ上がらないのか?

140円台の円安を直接の原因に、日本のGDPが5兆ドル台から4兆ドルに約20%下がっています。

20%下がった日本のGDP

GDPは3面等価の性質を持つマクロ経済指標です。

マクロとは国全体、ミクロは国のなかの個々の売買取引です。

GDP=国の付加価値生産=企業所得+世帯所得=消費+投資+経常収支の黒字です。

世界のGDPに対する日本のシェアは、1990年の16%から現在は4%と、1/4に減ってしまいました。

世界のGDP成長力(平均4%台)に対し、日本は30年間、ゼロ成長だったからです。GDPの成長力が低いとその国の通貨価値は、下がります。円の、世界の通貨平均に対するレート(実効レート)は、40年前の1980年代(60)に戻ってしまったのです。

原因は日本企業の生産性

原因は、日本の企業の生産性(付加価値生産÷8時間換算労働者数)が、1990年の資産バブル崩壊のあと、30年も上がっていないことです。経済のあらゆる問題は「生産性」に集約されます。

日本経済の問題として、政府がこれを言わないので、知らない人も多い。

政府は、財政支出の増加を、日銀はマネーを増加させることしかできない。マクロ経済が担当の政府は、ミクロ経済の企業の生産性を上げる手段を持たない。

ビジネスマンや経営者が読むことの多い日経新聞も、国のマクロ経済ことは書いても、個々の企業のミクロ経済の生産性を上げる方法は知らない。記事での提案もできない。ところが国民は、政府に、民間の生産性も上げることができるという「万能」の幻想を持つっているようです。財政と通貨政策では、企業の生産性は上がりません。

減りゆく生産年齢人口

「ミクロ経済のGDP=1人当たり生産性×8時間換算労働者数」です。労働者数は、生産年齢人口(15歳~64歳)の1年0.6%の減少によって減っていきます。2020年代からは、減少が、年々、大きくなっていくのです。2060年には総人口も8,673万人(70.5%)に減少します。
(日本の人口:1950-2060)

出産率の低下による人口減

1年に130万人であるべき出生数は80万人台と40%も少ない。出生率の減少の原因は、多様ですが、もっとも大きいは、20歳代、30歳代の国民に、「将来の所得は上がる」という期待感が低いことでしょう。このため結婚しても2人以下の子供しか産まない。

生涯未婚率は男性28.3%、女性17.8%に上がっています(2022年)。37年前の1985年には、男性の生涯未婚率は4%、女性も4%だったのです。生涯未婚は「変なことだ」とされたのが昭和でした。

・(未婚率)
参考:男性28.3%、女性17.8%…生涯未婚率の現状と今後(2022年公開版)-Yahooニュース

・(出生数)

DVを受ける児童が4人に1人

最近知って驚いたことがあります。家庭内暴力(DV)を受けている児童が、20万5,029人(15歳未満:児童相談所への相談数:2020年)。2010年の5万件から、4倍に増えています。虐待死は、統計の3倍の350人が推計されるという。
参考:日本で虐待ってどれくらいあるの?~「虐待死」は統計の3倍以上ある可能性も-認定NPO法人3keys(スリーキーズ)

1年に生まれる子供の数は84万人(2021年)ですから、「DV20.5万人÷同世代人口84万人≒24%」…4人に1人が、内容に軽重はあっても、15歳までに一定期間のDVや性的虐待を受けていることになります。

原因の過半は「貧困」でしょう。自分より弱いものに暴力を振るう人間は、卑劣極まりない。なぜ弱い人を虐める賤劣な行為が増えたのか? たぶん子供や弱い妻にDVをする人ほど権威、権力、マネーには弱い。上への媚びへつらいと、下への暴力は同根です。

弱い者への心理的、肉体的なサディズムは社会の病理です。サディズムは、相手を虐待して、快楽を感じる、悪魔的な行為です。動物が自分の子供を虐めることはない。その卑劣さは倫理的には死刑に値します。少子化対策大臣は、何をやっているのか?

生産年齢人口減少が意味すること

2060年まで、生産年齢人口の割合は低下し、65歳以上の高齢化比率は、現在の30%から40%に向かって増加します。

生産年齢人口は「10年で6%の割合」で減って行きます。

・働ける世代が減る中で、
・働く人の生産性が上がらなかったのですから、1人当たり所得が減るのは当然でしょう。

年金生活世帯が30%

現在の人口構成比が、30%、2060年には40%に増える65歳以上の高齢者は、夫婦で平均21万円の厚生年金では、生活費に足りず、月5万円、1年に60万円以上の預金を崩さねばならない。

必要な金融資産は5,000万円

ほんの少し余裕をもたせ、生活が30万円/月なら、平均的な年金では9万円(年108万円)足りない。30年生きるとして「108万円×30年=3240万円」の預金と、売却できる資産が必要です。今後年2%のインフレなら、3,240万円の1.34倍の現在額で、4,350万円の預金が必要でしょう。金融資産5,000万円が目処になるでしょう(政府は2,000万円としていますが、賃金上昇のないインフレのなかではその計算は甘い)
(高齢者の生活費の事例)
参考:老後の具体的な生活費を知りたい!実際にいくらかかるの?-三菱UFJ国際投信

年金支給額は、現役世代の賃金に比例する

労働の生産性を上げて、現役世代の賃金を上げるしかGDP(=所得の減少)と年金給付額の低下を止める方法はない。

現在働いている現役世代の平均賃金が上がらないと、年金の支給額も増えない仕組みです(マクロ経済スライド)。実質GDPが増えないと、年金も増えない。むしろ減ります。政府が宣伝する100年安心の年金ではない。賃金が上がらないインフレのなかで5年先すら危ぶまれます。

ミクロ経済の、労働生産性

労働生産性(粗利益額÷総労働時間)は、経営者がリーダシップをとる経営改革によってしか高まりません。経営層と社員が、今の仕事の仕組みのままで長時間、真面目に働けばいいというものではない。

Next: 設備投資を怠ったツケを払わされている今の日本経済

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