バイデン政権は「インフレ退治」に専念
今回のスタグフレーションでは、前回石油ショック時とは対応が異なる国、地域が見られます。
明らかに変わったのは米国と日本です。米国は一転して景気よりもインフレ退治に全力を挙げています。50年前の日本や西ドイツよりも積極的にインフレ抑制のための金融引き締めを進めています。
従来FRBは市場が混乱しないよう、事前に予想できるように、FOMC毎に0.25%ずつ利上げをするとか、ある程度ゴールを示唆して緩やかな利上げを進めてきました。
ところが今回は市場の予想をはるかに超えるペースの利上げを行い、しかも利上げ開始から間もなく量的引き締めも開始しました。
このため、長期金利が急ピッチで上昇しています。
国際金融資本が大株主のFRBは株主の不利益になることは避けてきましたが、今回はバイデン政権がインフレの抑制を最優先し、24年の大統領選挙を有利に戦いたいため、インフレの早期解決を求めています。
バイデン大統領に任命された正副議長はその意向に逆らえません。
日本は先進国で唯一「マイナス金利」で立ち向かうが…
欧州は前回の石油ショック時には西ドイツがインフレ抑制に動いたほかは、フランスもイタリアも景気優先でした。
今回はユーロ圏としてECBが一括して動いていますが、足元ではインフレ急伸によって大幅な利上げ選択しましたが、引き締め転換は遅れました。ECBのラガルド総裁は当初インフレは一時的、個別的としていた分、対応が遅れました。
そして前回積極的にインフレ対応をした日本は、今回、世界で唯一マイナス金利を続ける超緩和国となっています。
日本のインフレ率が比較的低いことに加えて、国際金融村に長くかかわる黒田日金総裁が、国際金融資本の意向を受けて、欧米の引き締めの尻ぬぐいを行っていることも無視できません。
国内から円安など緩和行き過ぎの弊害も指摘されますが、まったく変える気はありません。
イギリスは今回も景気重視で、当初はインフレ抑制の利上げに出ましたが、トラス政権はその中で減税を決めたために債券市場が混乱し、トリプル安となりました。英国中銀は慌てて国債の買い入れを決め、金利上昇、ポンド売りを止めましたが、今度は利上げと量的緩和が同時進行する矛盾を露呈しました。