日本電産<6594>が24日に発表した2022年4−9月の連結決算では、純利益が前年同期比30%増の866億円と4−9月期として過去最高の好業績となりました。直近では日本電産に関する悪いニュースがかなり出ていて、それに合わせて株価も値下がりしていました。日本電産というと、急激な成長を遂げてきて、投資家からかなり人気の高い銘柄です。この株価下落で果たして、長期投資家としては買うべきなのか?を検討したいと思います。この記事はかなり経営的な側面も強いと思いますので、投資やビジネスに興味のある方はぜひご覧になっていただければと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
ネガティブなニュースが相次ぐ
まずネガティブなニュースがここにきて相次いでいます。
<関潤社長を事実上の解任>
今まで社長を務めていた関潤社長。
退任という形になっているのですが、事実上解任したと言わざるを得ない状況になっています。
関さんというと、日産から日本電産に招かれて、社長に就任したという経緯があります。
前提として、日本電産の創業者である永守さんという方がいらっしゃいます。
名物経営者とも言われる永守さんが、自分の後継者として連れてきたと言える人です。
しかしその人を、事実上解任してしまったのです。
これには様々な記事が出ています。
最後に辞める前には、永守さんと関さんの仲が相当悪化していたとのこと。
バチバチやり合っていたと言われています。
記事によりますと、どうやら関さんのやり方を永守さんが気に食わない。
例えば
永守さん:「朝7時に出勤しろ」
関さん:「自分は8時半に出勤したい」
関さん:「現場へのプレッシャーが強すぎるんじゃないか」「目標をもう少しどうにかした方がいいんじゃないか」
永守さん:「それはいかん」
ということで、どんどん軋轢が生じてきたらしいのです。
事実上この数ヶ月、関さんは何もさせてもらえない状態だったと思います。
解任という話も早くから出ていて、永守さんは、関さんに「そのまま会社に残るには無報酬で働け」とまで言ったということです。
これは大人の世界であっても、相当な確執ということになると思います。
<大量の退職者>
関さんが辞める、辞めないという状況下。
昨年2021年4月から22年3月に、なんと253人が日本電産を辞めたのです。
253人というのは、社員2500人余りに対しおよそ10%。
10人に1人という数字です。
特に関さんが干渉していた車載自動車関連の部分が多かったということです。
4月に入ってからも113人、253人の半分近い数字の人が辞めています。
<不正会計を生みかねない「プレッシャー」>
関さんが本当に駄目だったかというと、おそらくそうではないのではないか。
むしろ永守さんからの強すぎるプレッシャーから社員を守ろうとしていたような節もあるのです。
それが垣間見えるのが、不正会計を生みかねないプレッシャーです。
とにかく日本電産は、目標達成に対するプレッシャーがものすごいらしいのです。
現場では、内部での報告を上げるための会計を少しいじっていたという話もあります。
四半期ごとに報告するのですが、最初2か月は「順調に達成しています」というような報告を上げるのです。
それならばその間は怒られないわけです。
しかしその3ヶ月目。
四半期の最後の3ヶ月目に、少し市場の調子が悪くなったなどの理由で、ガタンと落ちるという。
こういうことが度々行われていたところへ、裏では借金。
いわゆる実態より高く見えてる部分を借金だと言っている記述も記事の中ではありました。
どこかで見た話だなと思い返してみると、実は東芝が不正会計をやったときにも、目標達成のために、嘘の数字を上げるといったことが起きていました。
それに近い状況も起きているのではないかということも推察されます。
関さんは逆に「この状況がおかしいぞ」ということで、何とかしようという話を永守さんにしたらしいのです。
しかしそれは受け入れられなくて、むしろ「あんな反乱分子」という風に捉えられたのかもしれません。
<仕様と異なる「安い素材」の製品を納入>
また別の記事(FACTAの記事)では、顧客に対して本来合意したはずの仕様とは異なる安い素材を使った製品を顧客企業に納入していた。という記事もあります。
<永守会長のインサイダー疑惑>
ちょっと別の話では、自己株取得。
日本電産が自己株取得をしているのですが、自己株取得というと一般的に信託銀行におまかせして、実際に取得する会社側は細かいところに関与しないというのが普通です。
ところが永守さん、実は株価に対する異様なほどの執念がある人なのです。
特に自分の会社の株価に対してです。
永守さんとしては、会社の会長ですから、その内部情報をたくさん知る立場にあるわけです。
その人が株を買うときの値段を細かに指示してきたというのです。
内部情報持った人が、価格に対して何か影響を与えるということにまさに他ならないです。
意図としては、もしかしたら株価を下支えしようと思ったのか、あるいは、より安く自己株取得を行おうと思ったのか。
真意はわかりませんが、いずれにせよ、その価格に対して言及したということは、インサイダーの疑惑が持ち上がっても仕方のない状況になってるわけです。
このようにたくさんネガティブなニュースがわっと出てきたのです。
その端緒となっているのが、まさに関さんの解任というところにあるのではないかと思います。
やはりそこで働いてた人たちが沢山やめたという事実からわかるように、関さん自体の人望はあった。
それに対して永守さんがきつい当たり方をした。
(その結果)永守さんから人心が離れてしまったという状況に見えるわけです。
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