半導体最強TSMC、強みは「台湾」
ここまで半導体製造装置の話をしましたけれども、その中で一つ半導体という分野で今ちょっとホットなのがTSMCです。
なぜホットかというと、あのウォーレン・バフェットがTSMCにおよそ5000億円以上も投資していることが判明したからです。
私もそれを深堀りしている中で、この会社(台湾の会社なのですが)そもそも台湾という国に、大きな強みがあるのではないかということが明らかになってきたわけです。
TSMCを知らない方のために簡単に紹介しますと(別の記事「バフェットも買った!半導体株は底を打ったのか?」でも紹介してるので、そちらもご覧いただきたいのですが)半導体の最先端を走っている会社です。
皆さんあまり耳にすることないかもしれません。
それはある意味、世界最大の半導体メーカーでありながら、黒子に徹してるのです。
ファウンドリーといって、設計とかブランドは別の会社。
例えばアップル、AMD、NVIDIAといった会社が供給している商品。
その製造を請け負ってる会社なのです。
その製造技術というのが高くて、インテルとかに先駆けて、3nmとかの、より小さい製品、小さい半導体を作れるようになったわけです。
それで高い収益と成長を遂げているのですが、これができたのも、台湾という国の強さがあるのではないかと考えられるのです。
<強み① 理系人材育成を強化>
台湾が、今何をやってるのか。
この20年の話なのですが、特に政治としてやってきたのが、理系人材育成を強化です。
台湾、小さな国です。
九州ほどの面積しかない国です。
しかも、中国からの脅威に常にさらされている。
これを守るためには、国力を強化しなければならないという切実な思いがあるわけです。
じゃあどうやって国力(を強化していくか)。
とにかく軍事力というのはもちろんなのですが、経済力をつけて、それも糧にしなければならないわけです。
どうやってそれで立国をしていこうかと考えたときに、理系人材強化をやったのです。
実は台湾には、徴兵制があるのですが、理系の大学に行けばその条例が免除される。
例えば韓国とか、あるいは徴兵があるロシアの現状を見ていると、とにかく徴兵に行きたくないって人はいっぱいいるのです。
じゃあどうしたらいいか、理系の大学に行こう。
勉強しようということになるわけです。
それで、TSMCは半導体製造。
まさに理系の研究開発もそうですし、製造もそうです。
理系人材がものすごく重宝される分野ですから、そこに人材が大量に供給されることになるというわけです。
<強み② 真面目な国民性>
そして台湾はまだ発展途上国という位置づけでもありますし、根は日本人に近くて、真面目なのです。
工場ですから、3交代制。
この半導体の工場は、本当に24時間稼働。
そこでとにかく真面目に熱心に働く。
TSMCは給料も台湾の中では高いと言われているのですが、そこで真面目に働く「シフト星人」という人がいる。
ということが言われているのです。
シフト星人。
もうとにかく熱心に働くワーカーホリックな人です。
もちろんアメリカでもそういう人がいないことはないのですが、アメリカでこれをやろうと思ったら、かなり高い給料を払わないと来てくれないのです。
そりゃそうです、アメリカはある意味ITなんかが発達して、おそらく工場でもせっせと働くよりも、IT系企業で一発当ててやるという方が、もしかしたら儲かるかもしれないです。
そんな中で、工場勤務なんかやってられないと。
それをやらせるんだったら高い金を払え、ということになるのです。
<強み③ 給与が抑えられる>
ところが台湾では、発展途上国ですから、台湾でやる限りは給料を抑えられるというところがあるのです。
逆に今、台湾のTSMCが地政学リスクなどもあり、アメリカで工場を作ろうとしてるのですが、アメリカではなかなか人が集まらない。
もし来たとしても、台湾人のようになかなか真面目に働かないというところがあるのです。
それで、例えばTSMCの創業者(今は経営の一線から退いてるのですが)は「アメリカで、少なくとも同じコストでやっていくのは難しいだろう」ということを言っているのです。
だから、やはり台湾に工場が立地して、台湾人がやっているということが、TSMCの大きな成功要因のひとつだと考えられるわけです。
日本の強みと弱み
このように国の特徴と企業の成長力というのは、一部リンクしているところがあると考えます。
じゃあ日本企業ってどうなのか?
日本でどうなのか?
というところを、もう一度考えてみたいと思います。
主に人の性格といったところで、挙げさせてもらいました。
例えばこれが全部がそうだとは限りませんし、例外はもちろんあると思うのですが、一例として挙げさせていただきました。
<日本の強み>
例えば強みとしては、日本人に言われる
- 規則正しさ
- 清潔
- 真面目
- 職人気質
- 粘り強さ
というところがあるのではないかと思います。
これはどういうことかというと、特に製造業に関しては、ものすごく活きるものなのです。
製造業のラインで働くということは、規則正しくないといけないですし、半導体みたいな精密なものが要求される分野では清潔感。
これが絶対大事なのです。
日本人はまず家に上がるには靴を脱ぎますから、アメリカに行くと逆にそれすら当たり前ではないので、それを徹底しなければいけないところから始まるという大変さがあるわけです。
さらにはラインで働くには真面目さ(が必要)ですし、あと職人気質というのはどちらかと言うと研究開発の分野だと思います。
さっき一所懸命という話がありましたが、一つの分野を徹底的にやり抜くみたいな、そういうところが必要になってくるのではないかと思います。
それから粘り強さです。
さっき顧客志向と言いましたが、顧客が結構厳しいことを言っても、それにハイと言ってなんとかついていくというところがあると思います。
これがあくまで一般論ですけれども、欧米人だったら、そんな無茶苦茶言うんだったらもうやめた、となってしまうのではないかと思います。
それも一つの強みなのではないかと思います。
特に言い切れるところは、一例として挙げたクリーンルームです。
写真を見ていただきます通り、ホコリ一つない世界で、研究あるいは製造を行っている。
これをやり続けられるというのは、日本人一つの特徴であると思います。
研究開発についても、さっき給料の話もしました、アメリカで一流の研究者を雇おうと思ったら、正直年収2,000~3,000万は当たり前に払わないといけない。
なぜならアメリカの大学に行くということは、実はアメリカの大学の学費はすごく高い。
しかもそれを入るために、学生たちはローンを背負ってまで大学に行っているのです。
かなり高いです。
そのローンを返そうと思ったら、高い給料の会社に入らないといけない。
そうなってくると必然的に給料上がるわけです。
ところが日本だったら、年収が1,000万もあれば高いとなります。
実際に先ほど挙げたような企業の給料を見ると、平均で1,000万円を超えてる。
確かに高いのですが、アメリカに比べたらかなり安いです。
だからそういった意味で、コスト競争力もあるのではないかと考えられます。
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