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アップルを苦しめる“脱中国化”の意外な盲点。韓国サムスンが成功し、アップルが苦戦する理由とは?=牧野武文

アップルが脱中国化をする本当の理由

もちろん、こういった理由もありますが、それはどちらかというと後付けで脱中国化を後押しさせる要因であって、脱中国化の本質的な理由は関税と人件費の2つです。

その典型的な例がインドです。インドは国内産業を成長させるために、IT関連製品の海外製品の輸入を制限する政策をとっています。スマートフォンについては、2014年から関税の引き上げをたびたび行い、現在では20%の関税がかけられるようになりました。この措置は、WTOの協定違反であるという見方もあり、日本政府も紛争解決機関による審理を要請しています。
参考:インドによるICT製品の関税引上げ措置についてWTO協定に基づくパネルが設置されました-経済産業省

これだけ関税が高くなると、中国で生産したスマホをインドに輸入にして販売するのではなく、インドで生産して、インド市場で販売しようと誰もが考えるようになります。そこで、各メーカーは、インドに製造拠点を置き、地産地消を進めていくことになります。これがインド政府のねらいでもあるわけです。

このインドにうまく対応したのが、小米(シャオミ)でした。シャオミは、中国の下沈市場(地方市場)とインド市場がきわめて似ていることに着目し、格安のエントリーモデルのサブブランド「紅米」(ホンミー、Redmi)を2013年からスタートさせ、中国地方市場とインド市場の両方を同時に攻略する戦略を取りました。そして、インドが関税による国内産業保護策をとることを察知すると、EMS企業であるフォクスコンとFlexの合弁によりインド工場を設立し、現在では、インドで販売するスマホの99%は、インドで生産するにまでなっています。

インドは中国と国境問題が存在していることもあり、反中国的な空気の強い国です。たびたび、中国製品の不買運動が起きますが、そのたびにシャオミは「Made in India」「Mi from India」を強調し、インド市民からも準国産品のような扱いを受け、2017年以降はサムスンを抜いてインド市場で最大シェアをとり続けています。

アップルも同じ考え方で、インドで販売されるアップル製品のインドでの現地製造を進めています。2014年にはフォクスコンがチェンナイに、2015年にはマハラシュトナに工場を置き、2017年にはWistronがインドのカルナータカ州に工場を設立してiPhoneなどの製造を始めています。

脱中国化で起きた2つの問題

しかし、難航をしているようです。ひとつは熟練工不在による製造品質の問題、もうひとつは労働条件をめぐる問題です。特にフォクスコンはチェンナイ工場を放棄し、マハラシュトナ工場も製品の納入はまだ行われないという状況です。

唯一、製品納入が行われていたWistronの工場でも2021年に大規模な暴動が起こり、放火をされ、大量のiPhoneが掠奪されるという事件が起きました。原因は工員側とWistron側で食い違っています。工員側は労働時間が延ばされたのに、報酬が引き下げられたと主張をしていますが、Wistron側は人材派遣会社に以前と変わらない正規の賃金を支払っていると主張しています。間に入った派遣会社に問題があったようです。

インドには、この他、Pegatron、Flexなどもアップル製品を生産する工場を置いていますが、やはり労働問題と製品の品質問題に悩まされ続けています。

米国でも関税が問題になっています。2018年にトランプ政権は、米中の経済を分離させるデカプッリング政策に基づき、中国に対して制裁関税を課しました。いわゆる通商法301条関税です。この措置については国際貿易裁判所で訴訟が起こされていますが、判決が出るのはまだまだ先のことになります。

アップルは中国で生産されていたアップル製品を、米国に輸入して米国で売るという仕組みであったため、生産工場を中国以外に移転をすることが必要となりました。

その任を担ったのがフォクスコンで、ベトナムやブラジル、米国に工場を置き、アップル製品の生産を始めています。また、ベトナムにはLuxshare、GoerTek、Compalなども工場を建設して、アップル製品の生産を始めています。

2019年にはLuxshareがベトナムでAirPodsのテスト生産を始め、現在のAirPods3では、全体の15%程度をベトナムで生産するようになっています。

しかし、熟練工不足による品質問題を抱えているようです。AirPodsの接合部から余った接着剤がはみ出すという問題が起きていて、この問題を解消するのにそうとうな苦労をしているようです。このような製品は、出荷前の製品検査で不合格品となるため市場に出回ることはありませんが、工場の合格品率は大きく下がります。

また、フォクスコンもベトナム工場を設立し、2021年末からiPadとMacBookのテスト生産を始めています。しかし、こちらも熟練工不足に悩まされているようです。

このため、アップルでは設計を改善し、簡素化を進めています。特にMシリーズのSoCは非常に性能がよく、必要な半導体はSoCの中に組み込むことで、基盤設計を大きく簡素化することができます。これを利用して、MacBookとiPadの基盤設計を共通化しようとしています。この共通化はかなり進み、素人の見た目にはMacBookとiPadの基盤は見分けがつかないところまできているそうです。

Next: 脱中国化を成功させた韓国サムスン

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