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東京電力が「家庭向け3割値上げ」の前にやるべきこと。脱炭素・再エネ拡大で停滞する日本のエネルギー政策=澤田聖陽

東京電力ホールディングスが、国の認可が必要となる家庭向け「規制料金」で約3割の値上げを経済産業省に申請する方針を決めたと報道されている。海外からの化石燃料の輸入に過度に頼った今の日本の発電体制では、LNG等の価格が上昇すれば電力料金も上げざるをえないこととなる。値上げは不可避だが、その前にやるべきことがあるだろう。(『 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 』澤田聖陽)

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※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2023年1月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:澤田聖陽(さわだ きよはる)
政治経済アナリスト。国際証券(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)、松井証券を経て、ジャフコ、極東証券にて投資業務、投資銀行業務に従事。2013年にSAMURAI証券(旧AIP証券)の代表に就任。投資型クラウドファンディング事業を立ち上げ拡大させる。現在は、澤田コンサルティング事務所の代表として、コンサルティング事業を展開中。YouTubeチャンネルにて時事ニュース解説と株価見通しを発信している。

東京電力、家庭料金「3割値上げ」申請へ

東京電力(東電)が、国の認可が必要となる家庭向け「規制料金」の値上げを経済産業省に申請する方針を決めたと報道されている。

電力小売りは2016年に自由化されているが、それまで大手電力会社が提供してきた規制料金も一時的措置として存続された(当初は2020年3月末までの予定であったが、市場の競争の状況から廃止が見送られ、2020年4月以降も規制料金の提供は続けられている)。

規制料金は、燃料調達や発送電コスト、人件費などの費用を積み上げ、料金に反映する「総括原価方式」と呼ばれる方式で決められる。

燃料価格の変動については、「燃料費調整額(燃調)」をいう名目で毎月調整されているが、燃調には上限が設定され、上限を超えた部分に関しては電力会社が負担しなければならない。

東電は現在の燃調の範囲内では既に燃料価格の上昇を吸収することができなくなっており、今回料金自体を見直す申請を経産省に行う予定ということである。

電気料金値上げは不可避

結論から言うと、現状のエネルギー価格(特にLNG価格)では、電力小売り価格を値上げすることは不可避だとは思う。

電力小売りには規制料金と自由料金があり、規制料金はあくまで完全自由化までの一時的措置であるのだが、足元では新電力などが販売している電気料金は規制料金を大きく超えている状況だ。

自由料金は、新電力などの新規参入が行われ、規制価格よりも価格が安いというのが1つの魅力になっていたはずなのだが、足元では逆転現象が起こっており、規制料金で販売している電力大手は自由料金との差額を電力会社が負担している状況である。

電力供給で重視されるのは、安定性と料金である。

日本は安定性という部分については、諸外国に比べても停電が極めて少なく、安定的な電力供給が行われていると言えよう。

一般的に安定性と料金とは反比例する。

安定的な電力供給体制を構築するには、電力会社がある程度高い電気料金を徴収することが必要ではある。

東電の直近の決算状況を見ると、営業利益ベースで赤字になっており、このまま値上げを行わずに規制料金の販売を続けていけば赤字が拡大し、経営が不安定になることは間違いない。

このような状況を鑑みれば、東電が今回値上げを申請したこと自体は、電力を安定供給するためには致し方ないとは思うが、同時に東電および国はやるべきことがあるだろうと考える。

Next: 原発再稼働は必須。値上げ不可避だが、その前にやるべきことがある

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