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世紀の奇策家ジャック・マーは、なぜ日本に潜伏していたのか?習近平が狙うデジタル人民元とアリペイ統合の内幕=牧野武文

アリババ創業者であるジャック・マー氏が、長期に渡り日本にいるとの報道がありました。現在は香港に渡り、中国に帰還するのでは?と噂されています。しかし、中国の実情から見ると、ジャック・マー氏の行動は不可解です。習近平政権はジャック・マー氏の存在をどのように捉えているのか?真実に迫ります。(『 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 』牧野武文)

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※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2023年1月30日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:牧野武文(まきの たけふみ)
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。

ジャック・マーはなぜ追放されたのか?

みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。

今回は、デジタル人民元とアリペイの関係についてご紹介します。

日本でも報道がある通り、アリババの創業者である馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)が半年もの長期にわたって日本に滞在をしています。その後の報道によると、東南アジアに行き、香港に入って旧正月をすごしているそうです。香港にいるといことは、いづれかのタイミングで中国に入るのではないかと見られています。

なぜ、ジャック・マーが中国を離れ、日本にいたのにかはさまざまな説があります。中国政府から要注意人物としてマークをされたため、面倒を避けるために日本に避難をしているという説もあります。

その根拠となっているのは、2022年にアリババに独禁法違反で3,000億円という巨額の罰金が課せられ、さらにはスマホ決済「アリペイ」を運営するアントグループの上場を政府によって妨害され、さらにはこの1月には株主構成の変更が行われ、議決権ベースで53.46%相当(過半数です)を持っていたのに、それが6.208%相当にまで減らされ、一株主の地位に落とされてしまうなどの数株の政府による”迫害”のようです。

もちろん、一連の事件をどのようなストーリーで解釈するかは、個人、メディアの自由なので、私ごときがあれこれ言うことではありませんが、私は素直に、この一連の流れは「デジタル人民元とアリペイの融合」の準備作業のように思います。

中国政府はデジタル人民元を国内の決済手段としてだけでなく、一帯一路構想と結びつけて、東南アジア、中東、アフリカ、さらにはEUとの貿易取引にも使える国際決済通貨、国際基軸通貨にしようとしています。

これは日本にとって、由々しき事態です。もし、東南アジア各国が貿易の取引通貨としてデジタル人民元を使うようになったら、日本のアジアの中での居場所は失われます。

なぜジャック・マーは日本にいたのか?

アリババの創業者である馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)氏が日本に半年もの長期滞在をしていることは、多くの読者の方が報道などでご存知だと思います。なぜ日本にいるのか、その理由はご本人しかわかりませんが、中国のメディアでは日本の農業と水産養殖技術を学ぶためとされています。

しかし、1月7日にはタイのバンコクに現れ、ボクシングの試合を観戦したというニュースが報じられ、その後、香港に移動し、旧正月である春節は香港で過ごしているそうです。香港にいるということは、中国へ帰国する準備でもあるため、いつジャック・マーが中国に入るのかが注目をされています。

ジャック・マーはジェダイの騎士なのか?

この間、ジャック・マーの周辺には大きな変化がありました。それはスマホ決済「アリペイ」を運営するアントグループの株主構成の大幅な変更があり、実質的な支配者であったジャック・マーが一株主の地位に後退したというものです。

アントは、元々アリババのアリペイ部門が独立したもので、上場をすればアリババ、テンセントに次ぐ、大型テック企業になることは確実です。ジャック・マーの代わりに大株主になったのが、杭州星滔という政府出資の投資企業です。ジャック・マーの虎の子のようなアントグループを政府に召し上げられてしまったことになります。

これだけ聞くと、何かひどい話のように思えます。確かに2020年以降のジャック・マーは、政府との関係が大きく動き、そこから私たちは壮大な善と悪が衝突するストーリーを描き出してしまいます。

その壮大なストーリーの主役は善の象徴であるジャック・マーで、ジェダイの騎士のような存在です。悪の象徴は習近平主席で、ダースベーダーのような存在です。このストーリーでは、ジャック・マーは、中国でライトセーバーを取り上げられ、フォースの力も封印されてしまったため、ダークサイドに落ちるのを避けるために日本に長期滞在していたということになります。映画化をしたら、なかなか面白そうなストーリーです。

中国の政権内部で、何が起きているかは正確なことは誰にも知ることはできません。中国は社会主義国であり、政権の情報統制は私たちの想像を超えた厳しさにより律せられています。公式発表以外、一切の情報を漏らしません。引退をしても回顧録など出版しませんし、政権内部にいるときに親しい記者や友人にオフレコで話すということもありません。万が一、漏らしたりすると、すぐに粛清されて失脚することになります。

ですので、世の中に出回っている「政権内部では…」という情報は、すべて、外部の人による推測になります。もちろん、推測だからといって、無意味な情報というわけではありません。種々の状況と照らし合わせて、合理的な推測もあれば、不合理な推測もあります。そして、個人の妄想を乗せたファンタジーもあります。このジャック・マーの物語は、この3つのうちのどれでしょうか?

Next: 習近平を激怒させたジャック・マーの言動

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