規制逃れのために設立されたアントグループ
当初は、中国政府もこのVIEスキームについて黙認をしていました。しかし、決済事業者となると話は別です。中国の金融情報を持つことになるため、それを外国人株主に開示するようなことがあっては困るからです。また、テロ資金や反中国活動の資金移動などは厳しく制限しなければなりませんが、決済事業者の株主が外国人であると中国政府の制御が効きづらくなります。
このようなことから決済事業者の免許は100%の内資企業にしか与えません。アリババは紙の上では内資100%企業ですが、実質的には国際企業の支配下にあります。ここを中国政府は問題にし、決済事業者の免許をアリペイに与えることを保留しました。
そこで、ジャック・マーは、アリペイをアリババから分離して、アリババとは関係のない企業にする必要がありました。これで生まれたのがアントグループです。しかし、アリババの子会社であっては困ります。結局、外資の影響を受ける会社であることには変わりがないからです。
ジャック・マーが取った策は、ジャック・マーの個人会社にすることでした。しかし、ジャック・マーの完全な個人会社でも問題がありました。なぜなら、ジャック・マーはアリババの大株主であり、アリババには実質的に外資が入っている会社だからです。アリババの外国人大株主が「テロ資金を送金させたい」と言ってアリババに命じ、ジャック・マーがアントに命じたら、可能になってしまいます。もちろん、テロ資金の送金自体が違法なので、そんなことは起こりませんが、中国政府としては仕組みとしてそういうことが起こり得ないようにすることを求めています。
そこで、ジャック・マーが考えたのが実に複雑で、巧妙な仕組みでした──
・小米物語その80
・アリババ物語その80
・今週の中華IT最新事情
・Q&Aコーナー
※これらの項目は有料メルマガ購読者限定コンテンツです →いますぐ初月無料で購読!
<初月無料購読ですぐ読める! 1月配信済みバックナンバー>
※2023年1月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
- vol.161:ジャック・マー氏の身に何が起きているのか。静かに進むアリペイとデジタル人民元の合作(1/30)
- vol.160:美団のドローン配送が本格化。なぜ、大都市でドローン配送が可能なのか、そのテクノロジー(1/23)
- vol.159:2023年、スマホはどう進化をするか。今年話題になるかもしれないスマホテクノロジー(1/16)
- vol.158:アップルが進める脱中国化。最大の課題は熟練工の不足(1/9)
- vol.157:中国のユニコーン企業の現状。第1世代ユニコーンはどれだけ生き残っているか(1/2)
※本記事は、有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2023年1月30日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にをご購読ください。今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。
<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>
※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込550円)。
- vol.156:あらゆる商品が1時間で届けられる時代。デリバリー経済がさらに進化する中国社会(12/26)
- vol.155:変わりつつある日本製品に対するイメージ。浸透する日系風格とは何か(12/19)
- vol.154:中国に本気を出すスターバックス。3000店の新規出店。地方都市の下沈市場で、スタバは受け入れられるのか(12/12)
- vol.153:SHEINは、なぜ中国市場ではなく、米国市場で成功したのか。持続的イノベーションのお手本にすべき企業(12/5)
- vol.152:アリババがいち早く脱GMV化。GMVではなく、CLVにもとづくEC運営へ(11/28)
- vol.151:原神の売上は東京ディズニーランドとほぼ同じ。90后企業miHoYoの新しいビジネスのつくり方(11/21)
- vol.150:勢いのある種草ECに対抗するタオバオ。電子透かしを活用したユニークな独自手法を確立(11/14)
- vol.149:中国スマホゲームの進む2つの方向。海外進出とミニプログラムゲーム(11/7)
- vol.148:内巻と躺平とは何か。日本社会も無関係ではない成長した社会に起きる長期疾患(10/31)
- vol.147:中高生の消費、10の意外。意外にお金を持っている05后のお金事情(付録)(10/24)
- vol.147:中高生の消費、10の意外。意外にお金を持っている05后のお金事情(10/24)
- vol.146:WeChat以前の中国SNSの興亡史。WeChatはなぜここまで強いのか?(10/17)
- vol.145:Tmallがわずか15ヶ月で香港から撤退。アリババも通用しなかった香港の買い物天国ぶり(付録)(10/10)
- vol.145:Tmallがわずか15ヶ月で香港から撤退。アリババも通用しなかった香港の買い物天国ぶり(10/10)
- vol.144:クーポン設計のロジックと、ウーラマの行動経済学を活かしたユニークなキャンペーン(10/3)
- vol.143:「抖音」「快手」「WeChatチャネルズ」三国志。ライブコマースとソーシャルグラフの関係(9/26)
- vol.142:ライブコマースはなぜ中国だけで人気なのか。その背後にあるECの成長の限界(9/19)
- vol.141:Z世代お気に入りのスマホはOPPO。コモディティ化が進む中国スマホ状況(9/12)
- vol.140:始まった中国義務教育の情報教育。どのような授業が行われることになるのか(付録)(9/5)
- vol.140:始まった中国義務教育の情報教育。どのような授業が行われることになるのか(9/5)
- vol.139:網紅式旅行で成功した重慶市。インバウンド旅行客再獲得のためにやっておくべきことを重慶に学ぶ(8/29)
- vol.138:Copy to China or Copy from China。新たなビジネスを発想するバイカルチャラル人材とは何か?(8/22)
- vol.137:私域流量の獲得に成功しているワイン、果物、眼鏡の小売3社の事例。成功の鍵はそれ以前の基盤づくりにあり(8/15)
- vol.136:株価低迷の生鮮EC。問題は前置倉モデルの黒字化の可能性。財務報告書からの試算で検証する(8/8)
- vol.135:急速に変化する東南アジア消費者の意識。アジアの食品市場で起きている6つの変化(8/1)
- vol.134:中国で始まっているメイカーの時代。中国ITの強さの秘密はアジャイル感覚(7/25)
- vol.133:データ駆動経営の成長と限界。人とAIは協調できるのか。AIコンビニ「便利蜂」の挑戦(7/18)
- vol.132:流量から留量へ。UGCからPGCへ。変わり始めたECのビジネスモデル。タオバオの変化(7/11)
- vol.131:ショッピングモールは消滅する。体験消費が物質消費に取って代わる。モールが生き残る4つの方法(7/4)
- vol.130:中国のメタバース状況。教育、トレーニングの分野で産業化。スタートアップ企業も続々登場(6/27)
- vol.129:SNS「小紅書」から生まれた「種草」とKOC。種草経済、種草マーケティングとは何か(6/20)
- vol.128:社会運動とビジネスと事業の継続。スタートアップに必要なものとは。シェアリング自転車競争史(6/13)
- vol.127:WeChatマーケティング。私域流量の獲得と拡散が効率的に行えるWeChatの仕組み(6/6)
- vol.126:SoCとは何か。中国と台湾の半導体産業。メディアテックとTSMCを追いかける中国(5/30)
- vol.125:5分でバッテリー交換。急速充電の次の方式として注目をされ始めたバッテリー交換方式EV(付録)(5/23)
- vol.125:5分でバッテリー交換。急速充電の次の方式として注目をされ始めたバッテリー交換方式EV(5/23)
- vol.124:追い詰められるアリババ。ピンドードー、小紅書、抖音、快手がつくるアリババ包囲網(5/16)
- vol.123:利用者層を一般化して拡大を目指すビリビリと小紅書。個性を捨ててでも収益化を図る理由(5/9)
- vol.122:ハーモニーOSで巻き返しを図るファーウェイ。ファーウェイのスマホは復活できるのか(5/2)
- vol.121:ライブコマース時代の商品品質とは。配送・サポートはもはや重要な品質の要素(4/25)
- vol.120:ディープフェイク技術の産業応用が始まっている。GANの活用で成長したバイトダンス(4/18)
- vol.119:付録部分(4/11)
- vol.119:主要テック企業はリストラの冬。安定成長へのシフトと香港上場問題(4/11)
- vol.118:北京冬季五輪で使われたテクノロジー。デジタル人民元から駐車違反まで(4/4)
- vol.117:アリババに起きた変化。プラットフォーマーから自営へ。大きな変化の始まりとなるのか(3/28)
- vol.106:盲盒のヒットで生まれた大人玩具市場。香港上場を果たしたポップマートと追いかける52TOYS(3/21)
- vol.115:ネット広告大手の広告収入が軒並み失速。ネット広告不要論まで。広がるDIY広告(号外)(3/14)
- vol.115:ネット広告大手の広告収入が軒並み失速。ネット広告不要論まで。広がるDIY広告(3/14)
- vol.114:スターバックス中心のカフェ業界に激震。テーマは下沈市場。郵便局や蜜雪氷城も参戦(3/7)
- vol.113:中国ビジネスに不可欠のWeChat。なぜWeChatは消費者ビジネスに使われるのか(2/28)
- vol.112:アリババ新小売へのスーパーの逆襲が始まった。YHDOSと大潤発2.0(2/21)
- vol.111:夜間経済とほろ酔い文化。「酒+X」店舗体験で変貌するバー業界(2/14)
- vol.110:二軸マトリクスで整理をするECの進化。小売業のポジション取りの考え方(2/7)
- vol.109:中国メディアによる2022年10大予測。暗い1年に次の飛躍の種を見つけることができるか(1/31)
- vol.108:主要バーチャルキャラクター大集合。実用用途に使われ始めたバーチャルキャラクター(1/24)
- vol.107:(付録)トラブル事例から見た中国ECの消費者保護。クーリングオフと覇王条款(1/17)
- vol.107:トラブル事例から見た中国ECの消費者保護。クーリングオフと覇王条款(1/17)
- vol.106:電動自転車がいちばん便利な乗り物。コンパクト化が進む中国の都市(1/10)
- vol.105:店舗の未来は「体験」をつくること。これからの主力商品は「店舗体験」(1/3)
- vol.104:2021年中国テック業界10大ニュース。1位はやはりテック企業への規制強化(12/27)
- vol.103:商品はショートムービーで紹介するのが主流。タオバオを起点にショートムービーで展開する興味ECの仕組み(12/20)
- vol.102:TikTokに使われるAIテクノロジー。最先端テックを惜しげもなく注ぎ込むバイトダンスの戦略(12/13)
- vol.101:交通渋滞を交通信号を制御することで解消。都市の頭脳となる城市大脳が進めるスマートシティー構想(12/6)
- vol.100:コロナ後に急増したネット詐欺。ねらわれる若い世代。被害者の6割以上が20代(11/29)
- vol.099:アフターコロナ後の消費者心理はどう変化したか。「健康」「環境」「デジタル」「新消費スタイル」の4つ(11/22)
- vol.098:なぜ中国政府はテック企業の締め付けを強化するのか。公正な競争とVIEスキーム(11/15)
- vol.097:始まった中国の本格EVシフト。キーワードは「小型」「地方」「女性」(11/8)
- vol.096:国潮と新国貨と国風元素。中国の若い世代はなぜ国産品を好むようになったのか?(11/1)
『
知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
』(2023年1月30日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中
知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
[月額550円(税込) 毎週 月曜日 発行予定]
急速に発展する中国のITについて、企業、人物、現象、テクノロジーなど、毎回1つのテーマを取り上げ、深掘りをして解説をします。