丼ぶりと京風うどんを提供する『なか卯』は4月5日、主力製品の親子丼を40円値下げすると発表しました。Twitterでの反応は「値下げありがとう。値上げの時代にありがたい話」と好評です。今回は歴史的な卵価格高騰の最中にもかかわらず、なぜ『なか卯』は値下げを行ったのかについて、その仕組みや狙いを考察していきたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
様々な分野の外食産業をチェーン展開するゼンショーホールディングス
なか卯は国内大手の外食チェーンであるゼンショーホールディングス(以下ゼンショーHD )が運営しています。ゼンショーHDは牛丼のすき家となか卯やファミリーレストランのココスやビックボーイなどを子会社に含んでおり、外食産業の幅広い経営をおこなっています。
出典:ゼンショーホールディングスHP
ゼンショーHDは1982年に弁当の販売事業から創業しました。その後、すき家やココスを新規事業に加え、その後もM&Aを通じて成長してきた会社です。
出典: ゼンショー各年度有価証券報告書より作成
主なセグメントは4つに分かれており、最も売上高が大きいのは牛丼セグメントです。
- 牛丼:すき家となか卯
- レストラン:ココスやビックボーイなど
- ファストフード:はま寿司など
- 小売事業:ジョイマートやマルヤなど
出典:22年3月期有価証券報告書より作成
以上のように、ゼンショーHDは様々な分野の外食産業をチェーン展開しており、なか卯もその中に含まれていることがわかります。
なぜ『なか卯』は親子丼を値下げできた?3つの理由
ではなぜなか卯は親子丼の値下げを打ち出したのでしょうか?
そこには大きく3つの理由があると考えます。
<理由その1:なか卯はゼンショーHDの中核事業ではないから>
ゼンショーHDは牛丼セグメントを中核事業としていますが、その中でなか卯よりもすき家がより重要だと考えられます。その理由は、両社の店舗数です。すき家はなか卯よりも多くの店舗を展開しており、ゼンショーHDにおいてより強い存在感を持っています。
出典:22年3月期有価証券報告書より作成
両社の収益の内訳は公開されていないため、あくまで推測になりますが、店舗数に大きな差があるため牛丼セグメントの多くを稼いでいるのはすき家なのであると考えられます。従って値下げで失敗してもゼンショーHDにはそこまで大きなダメージにはならないためであると考えます。
もしもなか卯が独立した企業だった場合、もし値下げに失敗して大きな赤字になってしまったら、致命的なダメージになる可能性があります。ゼンショーHDの一部だからこそ、このような戦略を展開できるのだと考えます。