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中国経済がおかしい。3つの壁を前に回復のめど立たず、対米強硬姿勢が国民不満のガス抜きに使われている=斎藤満

米中関係の悪化

米国のプリンケン国務長官の訪中を中国が拒否してきましたが、今月18日にようやく中国を訪問することが決まりました。

このところ米中間では軍事衝突につながりかねない中国の強硬策が目立っています。台湾海峡を航行する米国の駆逐艦の140メートル前を中国艦が横切ったり、南シナ海では米国偵察機の前を中国戦闘機が横切るなど、中国の危険な牽制行動が目立ちます。

欧州も台湾との政治交流を強めているため、北京政府は強く反発しています。

中国は台湾総統選挙で親中派が勝つことを期待し、その体制ができるのを待っています。これに対し、欧米は台湾総統が親中派になる事態を避けたいうえに、現在の蔡総統のうちに中国への牽制を強めておきたい面があり、中国包囲網が強まっています。

このため、米国のバイデン政権は経済面でも中国向けの半導体供給を制限し、技術面で中国を「兵糧攻め」しようとしています。

日本も中国向けの半導体供給を絞っていて、先日訪日した中国商務相は西村経済産業相に半導体の輸出規制を強く批判し、是正を求めました。米国は台湾の半導体も中国に使わせないよう動いています。

中国に対する西側の締め付けは厳しくなり、貿易の縮小にも反映されています。

政策に立ちはだかる3つの壁

中国経済の悪化に対して、北京政府は適切に対応するとの姿勢を示していますが、現実には政策対応が厳しい状況にあります。

まず財政面からの支援が困難な状況にあります。そもそも中央政府の財政状況が、公表される財政赤字よりも厳しいことです。これまで「一帯一路」で貸し付けてきた途上国向けの資金の多くが返済不能の「不良債権」化しています。その額は100兆円とも言われます。

さらに、財政支援策の大きな担い手となる地方政府が、やはり債務負担の重圧で身動きがとれなくなっています。特に、近年の住宅不況で土地利用料の売却収入が減り、地方政府の収入が減っているために、債務の返済も滞っています。こうした地方政府に公共事業などの拡大を求めても機能しません。

そして住宅市場の需給が崩れ、開発業者の多くが経営危機に陥っています。政府は市場の回復に努めますが、住宅の供給過剰で需給は緩く、政府の価格支持策にも限界があります。価格を高く維持すれば新規需要が伸びません。業者の経営悪化で未完成のマンションがゴーストタウン化しています。海外の投資家もこの住宅不況の影響を受けています。

この状況では住宅建設を柱とした景気対策は打てず、住宅を購入した人々の物件引き渡し、返金請求のトラブルも後を絶ちません。土地使用料の売買環境は冷え切ったままで、地方政府の収入回復にめどが立ちません。

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