fbpx

30年後の日本はもっと悲惨。黒田日銀“異次元緩和”の爪痕がいまの現役世代を苦しめ続ける=神樹兵輔

日本経済の長期に及ぶ「イバラの道」のスタート

こうして2023年4月8日に2期目の最終期日を迎え、10年間の任期をすべて終え、黒田日銀総裁は退任しました。

退任会見では、「大規模異次元緩和は適切な政策だった」の一点張りで「4%台だった失業率も2%台に下がり、400万人以上の雇用の拡大に貢献した」などと胸を張ったものでした。

雇用増加の大半は人手不足対策からの賃金水準の低いパートや非正規雇用にすぎず、全体の賃金も上がらず、金融機関などの経営に打撃を与えた異次元緩和の副作用や後遺症についてはまったく触れることもありませんでした。

しかし、この10年間で金融緩和に投じた日銀の資金総額は1,500兆円あまりに上ります。GDPの約3倍の規模です。

そして国債発行残高約1,000兆円のうち、すでに半分を日銀が保有する異常な状態となり、ETFなどの金融商品保有額も50兆円を超える――というベラボーな財政ファイナンスの危機的状況に日本を陥らせたのです。

学者出身の植田和男氏が日銀の新総裁に就きましたが、泥船の日銀ゆえに引き受け手がない中、どうやら名誉欲だけに駆られて総裁職を引き受けた――という説もありますが、いったいどうやって、これから正常な金融政策に戻す――というのでしょうか。

長期金利のコントロール(YCC)が効かなくなったら、金利上昇で日銀は膨大な国債の含み損を抱えて債務超過に陥ります。

日本円という通貨の信認を毀損した日銀のその後は、急激な円安が襲い国内物価急騰、ハイパーインフレで国の借金も多くがチャラになるものの、国民は大窮乏!――というハチャメチャな結末を迎えかねないわけです。

世襲3代目の故安倍元首相といい、能天気だった黒田日銀総裁といい、ホントに日本国のために、とんでもない状況を作ってくれたものなのでした。

コロナ禍の収束とともに、ロシアのウクライナ侵攻があり、足元では悪いインフレ(コストプッシュ型)でエネルギー価格や食料価格が上がりました。

さらに物流や人手不足の影響からよいインフレ(ディマンド型)も始まっているようですが、日銀の植田新総裁は、まだ安定的な物価上昇率2%には到っていない――というのです。

ゆえに、異次元金融緩和はこのまま継続すると言明しています。もはや局面が大きく変わっている――というのにです。

実際のところは、長期金利コントロール(YCC)だけはやめたくても、金利急騰が怖くてとても動き出せない――という状況なのは間違いないところでしょう(原稿執筆時点2023年7月17日。28日の日銀金融政策決定会合にて、黒田総裁はYCCの修正を決めています)。

この間、円安は米ドルだけでなく、ユーロに対しても、新興国通貨に対しても進行しています。欧米はインフレで政策金利を上げていますから、金利差で日本円が売られます。

一時はドル円相場で、151円まで下がりましたが(2022年10月21日)、長期的に考えると、身動きできない日銀ですから、これから先、ドル円やユーロ円で、200円台、300円台の超円安もあり得そうな気配さえしてきます。

為替の専門家は、目先の円高を憂いますが、長期では日本円低落の可能性のほうがはるかに高いでしょう。

Next: 奈落の底に落ちていく日本経済…30年後の「円安・地獄」に備えるには?

1 2 3 4 5 6 7 8
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー